ITmedia Mobileは12月中旬、2020年を代表するスマートフォンを決定する「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2020」の審査会を開催しました。
審査の対象となるのは、2019年12月17日から2020年12月7日までに発売したスマートフォン。選考委員とITmedia Mobile編集部がそれぞれ5機種を推薦し、その中で特に票が集まった10機種をノミネート機種として選定しました。2020年は「ハイエンド部門」と「ミッドレンジ部門」に分け、各部門で5機種ずつ(計10機種)、最終的に各部門で1機種(計2機種)を選定します。
2020年の選考委員は、ITmediaなどで活躍し、1年間を通じて携帯電話業界を取材してきた石川温氏、石野純也氏、太田百合子氏、佐野正弘氏、島徹氏、房野麻子氏、村元正剛氏、山根康宏氏の8人とITmedia Mobile編集部です。今回は、審査員が推薦した5機種とその理由を紹介します。
石川氏:「iPhone 12 mini」は存在感が強い
・推薦機種……iPhone 12 mini、Galaxy S20、Xpeia 1 II、AQUOS Sense4、Galaxy A51石川温氏
王道をいく5Gスマートフォンでいえば、「Galaxy S20」や「Xperia 1 II」の完成度が高かったですね。一方、これだけ大画面化が進む中で、あえて小さい方を攻めてきた「iPhone 12 mini」も存在感があります。
安価なモデルでいうと、「AQUOS sense4」は定番になりましたし、「Galaxy A51」も「5G対応機種ならこれでいいんじゃないか」と思える位置を狙ってきています。全体的に言えば、5Gスマホの初年度であるにもかかわらず、これだけのラインアップが出そろってよかったと思います。
太田氏:「Galaxy Note20 Ultra 5G」はSペンの進化に注目
・推薦機種……Galaxy Note20 Ultra 5G、Xperia 1 II、iPhone 12 mini、iPhone 12 Pro Max、Mi 10 Lite 5G太田百合子氏
「iPhone 12 mini」と「iPhone 12 Pro Max」は、どちらもエッジが立った端末ですから、自分自身どちらを買うかですごく悩みました。miniは小さくて、一見廉価モデルに見えがちですけれど、そんなことはなくて、完成度が高い。カメラもMaxと撮り比べましたが、品質的には比較すれば辛うじて分かるくらいの差しかない印象です。コンパクトモデルを求めていた層は絶対にいるので、そこにリーチするし、価格も手頃。SE(第2世代)とカニバらないかなと心配になるくらいインパクトがありました。
大きい方が画面は見やすいけど、小さい方が使いやすい。スマホにずっと付きまとってきた悩みですが、この両機種はこの両極端の特徴をそれぞれ備えていて、実際にラインアップとして登場してきたのが面白かったですね。何だかんだ言って、買ったのはiPhone 12 Pro Maxです。「大は小を兼ねる」という親の教えに従いました(笑)。iPhone 12シリーズの中でもとがった端末といえる「iPhone 12 Pro Max」(左)と「iPhone 12 mini」(右)
Galaxyは2020年のラインアップが豊富でした。FlipもFoldもあるし、石川さんが挙げていたS20も良い端末です。でもやっぱり、Sペンが劇的に進化したという点で「Galaxy Note20 Ultra 5G」を推します。書き味を比べても全然違いました。通信に関しては、ミリ波にも対応しています。ライターとしては(メモアプリの)「Galaxy Notes」がPDFに対応して、修正指示の赤字を入れられるようになったり、音声と手書きのメモがシンクするようになったりと、多くのアップデートがあって魅力的でした。ただし、価格はちょっと高いですよね。
「Xperia 1 II」は、みんなが期待するソニー製品として、「ようやくXperiaになってきた」という印象を抱きました。自分で撮っていて面白かったのは、3D iToFセンサーがすごく賢くて、被写体の何がメインになっているのかを、センターにいなくてもちゃんと認識してくれるところ。実際に結構良い写真も撮れました。ただし、Photography Proのアップデートなど、いろいろ追い付いていない部分もあったので、正直「Xperia 5 II」とも迷いました。
「Mi 10 Lite 5G」は、5G対応で2万円台という飛び抜けたコスパの高さが印象的でした。もちろん、それだけじゃなくて、動画撮影機能なども楽しかった。TikTokのようにショートムービーを手軽に上げる文化というのが、コロナ禍の影響もあって広がったと思うのですが、そこにちゃんとフォーカスした機能が搭載されています。Xiaomiは若い人に向けたトレンドをちゃんと抑えているな、と思いました。
房野氏:「iPhone 12 Pro」のLiDARスキャナーは楽しかった
・推薦機種……Galaxy Note20 Ultra 5G、iPhone 12 Pro、Xperia 1 II、Galaxy A51 5G、Mi 10 Lite 5G房野麻子氏
太田さんもおっしゃっていたように、2020年はGalaxyに勢いがありました。残念ながらHuaweiはあのような事態になってしまって、その位置を(Samsungが)ガッと取りに来た印象です。同ブランドが豊富なラインアップを展開する中で、やっぱりペンがあって、画面が大きくて、カメラも高機能な「Galaxy Note20 Ultra 5G」を選びました。他のSシリーズも完成度は高いですし、どれを選んでも2020年のGalaxyはよかったなと思います。Noteシリーズの集大成ともいえる「Galaxy Note20 Ultra 5G」
また、サムスンのすごいところは、エントリーモデルから変態端末まで全てをカバーしているところですよね。「Galaxy A51 5G」もひとまずはコレで良いと思える端末になっていると思います。同機の対抗馬は「AQUOS sense5G」になるのでしょうが、発売時期の関係でまだ直接対決が見られないのが残念です。
iPhoneに関しては、みなさん小さいモデルがお好きみたいですが、私は普通の人が持つのにちょうど良いのは「iPhone 12」か「iPhone 12 Pro」だと思っています。実際個人で買ってみて、LiDARスキャナーが役に立つし、面白いと感じました。そういった意味でiPhone 12 Proをお勧めしています。
Xperia 1 IIについて、私は軽さとデザインを評価していて、このサイズであの軽さはびっくりしました。iPhone 12シリーズのおかげであまり目立たなくはなってしまいましたが、四角っぽいデザインが久々にXperiaらしくて、一目見て気に入った端末でもあります。
Mi 10 Lite 5Gについては太田さんがおっしゃっていたことそのままですね。これで良いと思う人は結構いらっしゃると感じます。(おサイフケータイや防水などの)日本仕様はカバーしていませんが、それに勝るコスパのよさ、値段の安さがあるなと思います。日本メーカーもなかなか難しいだろうな、と感じさせられたモデルでした。
村元氏:「TCL 10 5G」には2020年の新人賞をあげたい
・推薦機種……iPhone 12 mini、Xperia 5 II、Galaxy Z Flip 5G、Redmi Note 9S、TCL 10 5G村元正剛氏
iPhoneからは「iPhone 12 mini」を選びました。小さいけれども大きいディスプレイを備えていて、チップも「A14 Bionic」も搭載しています。SEが売れるコンパクトのニーズがあったと思うのですが、ここまでコンパクトにして性能が他の12シリーズと遜色ないことは面白い。今まで仕方なくSEを選んでいた人は、miniという選択肢が加わったことがうれしいだろうなと思いました。
Xperia 5 IIは、縦長のサイズが持ちやすいのですが、実は横向きにしたときにもカメラとして持ちやすいです。また、今回は音が前のモデルよりも良くなっていたり、リフレッシュレートを上げていたり、と良い意味で総合力を高めてきたなという印象を抱きます。ソニーとして、誰も使える良い端末をきっちり作ってきたなと思いました。
Galaxyは良いモデルがたくさんありましたが、個人的な趣味として「Galaxy Z Flip 5G」を推します。高くて買っていないですけどね(笑)。4Gモデルを出して、1年たたないうちに5Gモデルを出したところは評価したいです。シンプルに、コンパクトだから持ち運びに便利で、ハンズフリーで置いたまま写真を撮れるなど、使い勝手も良い2つ折りという形で、シリーズを続けてほしいなという気持ちを込めて、これを選びました。
後は、安い方で「Redmi Note 9S」。同じくXiaomiのMi 10 Lite 5Gと悩みましたが、SIMフリーで2万4800円~2万9800円(税込み)でありつつ、Snapdragonの700番台を搭載していて、結構良いんですよね。今まで安い端末って、CPUが低かったり、USBが古いのだったりとか、SIMが1枚しか挿せないとか、不満点があったのですが、そこをきっちり押さえてきたなと思います。ゲームをしても、動画を撮っても、不思議に全部できてしまう。僕の中ではこれが2020年のコスパ最強モデルで、「コスパと言えばXiaomi」という存在感を示した象徴的なモデルになったのではないでしょうか。
TCL 10 5Gは、5G対応機種での格安枠です。僕の中ではTCLは2020年の新人賞という扱いで、全然知名度がないなかでも良い端末を出していて、スペックとかデザインを考えるとコスパも高い。側面にスマートキーがあって、TCL自慢の「NXTVISION(ネクストビジョン)」という彩度やコントラストを上げる機能をワンタッチで利用できるんですよ。他メーカーの機種も画質を向上する機能を積んでいるんですけど、設定画面にいかないと切り替えられなかった。これをワンタッチでできるようにしたTCLの考え方が好きだなって、この端末を選びました。5Gスマホとしては3万9800円(税込み)と格安の「TCL 5G」
佐野氏:「Rakuten mini」には新興キャリアならではの面白さがある
・推薦機種……iPhone 12 Pro Max、Pixel 5、Xperia 1 II、iPhone SE(第2世代)、Rakuten Mini佐野正弘氏
2020年は「5G元年」と言われながらも、なんだかんだ5Gはそこまで話題にならなかったというのが正直なところ――。そう考えると、各社が力を入れたのはカメラだろうな、と思いました。しかし、特にGalaxyのハイエンドなどで象徴的だったのが、とにかくカメラの性能はすごいけど、やたらカメラが大きい。ケースを装着しないと使えないような出っ張りになっていて、正直スマートフォンとしての使い勝手はどうなのか、ユーザーにとってどうなのか、と考えさせられました。この方向性は今の技術トレンドとしては難しいんだろうなと思って、Galaxyはバッサリ外しました。
じゃあ、今の技術トレンドで現実的なスマートフォンカメラの進化ってなんだろうなって思ったときに、カメラそのものよりも「コンピューテーショナルフォトグラフィー」などと呼ばれるソフトウェア技術へのフォーカスが有力と感じています。そうなると、iPhoneやPixelは強いんだろうなということで、それぞれの最上位モデルである「iPhone 12 Pro Max」「Pixel 5」を挙げました。
ここにXperiaを入れたのは、光学機器が得意な会社なので、マニュアルでこれだけ自分でカスタマイズして撮ったら面白いですよ、っていうある意味現在のスマートフォンカメラトレンドの逆張りで提案してきたのが面白かったからです。
低価格帯についても、やはりカメラが1つのポイントになってくるなと思っています。中国メーカーのスマートフォンに多いですけれど、カメラの数がとにかく多いものが増えてきました。でも、実際そのカメラを何に使っているのか、と疑問に思える部分はあります。それならカメラはそんなになくていいから安くしてほしいと思う人は多いのではないでしょうか。
それならばと、別の方向に振ったモデルとして「iPhone SE(第2世代)」を挙げました。ベースの性能が非常に高いですし、日本では画面サイズが小さいことがあまりデメリットになりづらい。サブブランドからも早々に販売されていますし、販路という面でも非常に強かったと思います。
「Rakuten Mini」は、楽天モバイルで(周波数の無断変更など)いろいろあり、純粋に端末として評価するにはかわいそうなところもありました。これほど小さくて、FeliCaが使える。しかもeSIM対応、とコンセプトがしっかりとしています。こういった新しいモデルはやはり新興キャリアでないと難しくなってきているのかなと感じますし、何より使ってみて面白かった。なかなか普通のスマホとして評価するのは難しいのかもしれませんが、ガジェットとしては非常に面白いと思ったので、あえて入れています。いわく付きの端末になってしまったが、eSIMやFeliCaに対応した超小型端末として注目を集めた「Rakuten Mini」
島氏:AQUOS sense4にミドルクラスの底上げを感じた
・推薦機種……iPhone 12、iPhone 12 mini、Black Shark 3、AQUOS sense4、iPhone SE(第2世代)島徹氏
2020年は、市場環境の変化で低価格モデルの販売が中心になり、新型コロナの影響で生体認証の指紋センサーに注目が集まりました。こうした背景から「ベストなスマホ」とは言いづらいですが、「2020年に購入するベストなスマホ」ということでiPhone SE(第2世代)をまず挙げています。バッテリー持ちが良ければ文句なしなのですが。
AQUOS sense4も同様の理由です。日本のAndroidに求められる機能を一通りそろえつつ、弱点の夜景撮影もようやく改善されました。5Gこそ対応していませんが、ミドルクラスでは性能の良いSnapdragon 720Gを搭載しています。ミドルクラスでは「日常利用ならOKだろう」という表現をしがちですが、その中でも高いレベルでまとまったお勧めしやすいモデルです。また、シャープが国内販売中心のAQUOS senseシリーズの人気と販売台数の積み重ねにより、海外勢に負けない高コストパフォーマンスのスマホを出せる状況を作り出したことを非常に評価しています。
ハイエンドのAndroidはどうかというと、ある程度性能が行きついてしまい、プレミアムなのか、ビジネスなのか、ゲーミングなのかで迷いのある機種が多く出た年だと思いました。特にサムスン電子は技術や性能は高く、スマホの次のトレンドを探してもがいているのは分かりますが、製品としてはどの方向を向いているのかビシッと明確な端末が出せなかったと感じています。
一方で、マニアックですが日本にも通販限定の高コスパなゲーミングスマホが上陸してきました。この分野はeスポーツが話題になる一方、人気ゲームがどのメーカーのスマホを優先的に最適化するかで企業間の綱引きがあり、そこではゲームアプリとゲーミングスマホともに中国企業が強い状況にあります。日本で買えるモデルではXiaomiが出資する「Black Shark 3」が象徴的で、コスパが良くて高性能、人気の高FPSゲームの対応も増えています。また、ペルチェ素子のクーラーなどオプションパーツも充実しています。「ふざけているのか」とも思われそうですが(笑)、2020年を代表するという意味では入れるべき端末だと思います。販路は限られるものの、ゲーミングスマホとして島氏が高く評価する「Black Shark 3」
ちょっとかわいそうなのが、iPhone 12とiPhone 12 miniですね。5G対応で高性能、近年のiPhoneでは軽量コンパクトでコストパフォーマンスも良好です。また、iOS 14でアプリの標準設定の変更など使い勝手もかなり改善されました。ただ、指紋認証がない。新しいiPad Airのように、指紋認証が復活していたらと思う人は多いでしょう。新型コロナさえなければ文句なくベストなモデルだったはずです。
石野氏:「Xperia 1 II」はAI依存のカメラに一石を投じた
・推薦機種……Xperia 1 II、iPhone 12 mini、iPhone 12 Pro、AQUOS sense4、Mi 10 lite 5G石野純也氏
やはり、5Gがローンチされた1年ですので、なるべく5G対応は基本条件にしたいと思って選びました。iPhoneはシリーズ4機種全部対応させてきたことは、「おっ」と思えた部分。中でもiPhone 12 miniまで5G対応してきたことには驚きました。スペックを落とすのかなと思っていましたが、ProやPro Maxともチップは同じ。コンパクトさがグローバル市場でウケるのかは分かりませんが、日本では確実に評価されるでしょう。なかなか面白いものを出してきたなと思います。
一方、iPhone 12 Pro Maxを入れていないのは、太田さんもおっしゃっていた通り、カメラ写りが、手ブレ補正を載せつつminiとさほど印象が変わらなかったので、逆に外しました。Apple Pencilに対応したら入れたかもしれません。
とはいえ、自分のも含め、各媒体に掲載されたレビューを見ると、iPhone 12 miniはおじさんには割とつらいサイズ感になってきているのかなと。本命のiPhone 12かiPhone 12 Proのどちらかを入れようかと思い、金ピカのProを入れました。12のアルミもキレイではあるのですが、「俺がiPhoneだ」みたいなゴージャス感が足りない(笑)。デザイン面も含めてProにしました。無印の12ではないのは、それだけの理由です。
Xperia 1 IIは、一目見たときに「カッコイイな、これ」と思えた端末でした。iPhoneよりも薄いですし、デザインも初代と比べてかなり洗練された印象です。カメラも大幅に強化された一方で、撮ってみると難しいんですよ。これだけスマートフォンメーカーがみんな、コンピューテーショナルフォトグラフィーだとか、AIだとか、機械学習だ、とやっていて、もちろんそれは1つの方向性としてはアリだと思うのですが、何か機械に踊らされているというか、誰が撮っても同じ絵になってしまうのは、面白味に欠けるとも思うのです。人間が撮る写真の楽しさを再認識させてくれた「Xperia 1 II」
そこに完全逆張りで、AIじゃなくて、“ヒューマンインテリジェンス”に完全に重きを置いたXperia。単純にAIの技術がないのかどうかはさておき、方向性としてはユニークで面白いと感じました。スマートフォンのカメラに一石を投じると言うと大げさかもしれないですが、そのくらいのインパクトがありました。それに、実際に買って撮っていると、すごい楽しかったんですよね。あーでもないこーでもないと設定をいじりながら、こうすれば背景が出てくるのか、とか工夫するようになります。AIで忘れかけていた撮影の楽しさを思い出させてくれた一台です。また、連写機能もすごいインパクトがありました。Googleフォトに自動アップロードしておくと何十枚もの写真が何GB分も上がってしまうのは、非常に5G向けだと思います。
一方で、佐野さんに言い尽くされた感じではありますが、Galaxyは入れていません。落とした理由としては、カメラのバランスの悪さが理由です。全体的にSシリーズは完成度高いと思ったのですが、逆にパンチが足りないというか、パンチを設けるポイントのズレが気になりました。あとはFold2のように第2世代モデルが多かったので、最初に出てきたときほどの驚きには至りませんでした。僕が好きだったNoteも、あんなカメラお化けみたいな感じになってしまったので、そうじゃないんだよ、と。
2021年のFold3でNoteシリーズを統合するための助走なのかなとも感じつつ、現段階ではそんなことも分かりませんからね。
Mi 10 lite 5Gは、2019年末に国内参入したばかりで、いきなりKDDIに納入できたというのがすごいのと、5G対応であの価格とクオリティーで出してきたという戦略的な部分を評価しました。カメラのクオリティーは使ってみても普通に満足できます。SIMフリーでさらに安いモデルはありますが、ちゃんとネットワークとの相性を整えて、KDDIで出せたというところを含めて入れました。国内参入から1年たたずにキャリアからの発売を果たしたXiaomi。「Mi 10 Lite 5G」は5G対応ながら4万2740円(税込み)という安さも高い評価を得た
AQUOS sense4は、まだ5Gモデルに切り替えない人がいる中で、4Gモデルの集大成的なものを、という意味でチョイスしました。3万円台前半でSnapdragon 720を搭載して、カメラも改善されました。まだシャープは静止画が弱いなと思うところも残ってはいるのですが、多くの人は満足できるかなというところで、バランスの良さを評価して入れました。
山根氏:やっぱり「Galaxy Z Fold2」は買って楽しい端末
・推薦機種……Galaxy Z Fold2、Galaxy Note20 Ultra 5G、Rakuten BIG、TCL 10 5G、Redmi Note 9Sオンラインでの参加となった山根康宏氏
まず、iPhone 12シリーズについては5G時代に向けてフルモデルチェンジしたという点は評価できます。ただし個人的には他の機種の方が面白かったな、と思い、推薦機種5製品から漏れてしまいました。MagSafeのマグネットが他の機器やクレジットカードなどに本当に影響がないのか、という点もやや気になっています。
スマートフォンとは何ぞや? と考えたときに、買ったときにワクワク感が欲しいと思うのです。特にハイエンドの高い機種を購入した場合はなおさら。そんな中で、みんな見た目も似ているし、カメラも大体一緒だろうと思うと、やっぱり「Galaxy Z Fold2」は、開けるという点で魅力的。約20万円という高い価格でも、そこそこ売れていますし、ブランドとコラボして約40万円という価格の製品も出しました。多くの機種が横並びになった時代において、スマートフォン本来の「買ったら楽しいし、人に自慢できるな」というものを感じました。それほど売れないであろう日本市場にあえて出してきたことも評価しました。折りたたみスマートフォンとしての完成度を高め、山根氏も「ワクワクした」という「Galaxy Z Fold2」
Galaxy Note20 Ultra 5Gに関しては、皆さんおっしゃるように確かにカメラは出っ張っているのですが、実際にビジネスツールとして使っていると、太田さんがおっしゃっていたように、ペンの感度も向上して、手書きの認識がすごく良くなりました。オンライン会議しながら手書きでメモとかを取りやすいわけです。スマートフォンとして考えると確かにカメラが邪魔。僕はiPhoneがカメラを大きくしたからSamsungも「じゃあいいか」と甘えたのかなと思っています。でも、それを抜きにすれば、ビジネスツールとして非常に良い端末だと思います。あとは、スマートフォンは今年買ってそれで終わりじゃないので、「来年も使えますか?」と考えたときに、使えるなと感じたことも重要です。
これから5Gがもっと使えるようになったら、当然、動画を見る機会も増えるでしょう。そうなると、コンパクトモデルの需要もあるのですが、逆に大きな画面のニーズも高まるはず。これをあえてこの時期に出したという点で「Rakuten BIG」はすごいなと思いました。しかもミリ波にも対応させて、ZTEもこんなもうからないものをよく出したな、と(笑)。その意気込みを評価します。
僕は実際に購入して使いましたが、大きな画面が楽しいのです。カメラも意外に悪くなくて、5Gのエリアは都内は二子玉川の辺りが中心など、かなり限られますが、やっぱり楽しい。5Gをどう捉えるかで評価は変わるかもしれませんが、僕は香港だと5Gが使える環境にいるので、どうしても大画面というスマートフォンに目が行ってしまうのでこれを選びました。
TCL 10 5Gは、村元さんがおっしゃったことに近くて、TCLの心意気にほれたところがあります。2019年から定期的に4Gスマートフォンを出していたのですが、FOXはいろいろなケースを出してきます。マイナーなメーカーの場合ってなかなかケースを選べないことが多くて、結局面白くないということになりがちなのですが、そこを頑張ってやってきている。低価格の5G端末という点でも将来性はありますし、スマートフォン以外の周辺機器も展開しているという点で、評価しました。
Redmi Note 9Sについては、「子どもにiPhone持たせるなんてことはやめて、これを全部の学生に配れば良いじゃん」と思うほどです。2年使って月1000円ですよ。これを使うのが、日本の正しいスマートフォンの将来像を作るな、と思わせるくらいです。画面も大きいし、そこそこちゃんと動くし、カメラも問題ない。Mi 10 Lite 5Gとも悩んだのですが、安くて良い体験ができるものを日本に持ち込んだという意味でこちらにしました。税込み2万円台という安さが際立つ「Redmi Note 9S」
ITmedia Mobile編集部:「arrows 5G」は技術面での5G貢献を評価
・推薦機種……arrows 5G、iPhone 12 mini、Xperia 1 II、AQUOS sense4、iPhone SE(第2世代)ITmedia Mobile編集部の田中聡
arrows 5Gは、arrowsとして初めて5Gに対応して、フラグシップとして出てきた端末です。加えて、この機種はQualcommのSnapdragon 865のレファレンスモデルとして使われており、ミリ波対応しているという特徴もあります。また、富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)がローカル5Gを提供する際のデバイスとしても使われているなど、技術的な革新に貢献しているところを評価して選びました。5Gの技術革新に貢献した点を評価した「arrows 5G」
iPhone 12 miniは複数ラインアップがある中で、初めて「mini」を冠したモデルです。皆さんがおっしゃったように、小型で手なじみが良くて、性能もしっかりしていますし、iPhone 12と同じCPUやカメラを備えつつ、7万円台から。ミッドハイに相当する値段で、性能はハイエンドかつ小型ということで、非常に良い機種だなと評価しました。
Xperia 1 IIも、シリーズ初の5Gスマホで、カメラについても、カメラメーカーとして作り込んであるところが面白い。また2020年は、SIMフリーを拡販して、同モデルも、キャリアモデルとはタイムラグがありますが、比較的早期にSIMフリー化されました。かつキャリアモデルからメモリやストレージを増量し、デュアルSIMにも対応するなど、仕様をアップデートしたことも印象的でした。キャリアモデルを買った人が涙目になるようなシーンもあって、タイミングがどうかなと思う部分はありましたが、販路や市場を広げようとした姿勢を評価しました。
AQUOS sense4は、過去のsenseシリーズがすごく売れていて、それの正常進化モデルで、価格も過去機種からそれほど変わっておらず、3万円くらいですよね。Snapdragon 720Gの性能も良いということで、安定のシリーズとして2020年も入れさせてもらいました。
もう1つのiPhoneは、iPhone SE(第2世代)を入れました。日本市場がハイエンドとミッドレンジに二極化するなかで、Appleとしても苦肉の策という面もあったのかな、と感じました。一方、販売ランキングを見ても、いまだにSE2は上位にいます。これまででいう「iPhone 8」や「iPhone 7」など、売れ筋の新モデルに位置付けられ、万人に受ける機種として評価しました。
ハイエンド部門とミッドレンジ部門で各5機種がノミネート
審査員が選んだ5機種を集計し、ハイエンド部門とミッドレンジ部門の上位5機種をノミネート機種として選出しました。
ハイエンド部門
- 1位……Xperia 1 II(6票)
- 1位……iPhone 12 mini(6票)
- 3位……Galaxy Note20 Ultra 5G(4票)
- 4位……iPhone 12 Pro(2票)
- 4位……iPhone 12 Pro Max(2票)
ハイエンド部門のノミネート機種。左からGalaxy Note20 Ultra 5G、iPhone 12 mini、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max、Xperia 1 II
ミッドレンジ部門
- 1位……AQUOS sense4(4票)
- 2位……Mi 10 lite 5G(3票)
- 2位……iPhone SE(第2世代)(3票)
- 4位……Redmi Note 9S(2票)
- 4位……TCL 10 5G(2票)
ミッドレンジ部門のノミネート機種。左からAQUOS sense4。iPhone SE(第2世代)、Mi 10 Lite 5G、Redmi Note 9S、TCL 10 5G
ハイエンド部門は4位にiPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max、Galaxy A51 5Gがランクイン。1機種多いため、決選投票の結果、Galaxy A51が外れました。ミッドレンジ部門は4位の2機種が2票ずつで、1票だったRakuten Miniが落選しました。
ハイエンド部門およびミッドレンジ部門のそれぞれについて、ノミネート5機種の中から栄冠を手にする機種はどれか? 12月中に掲載予定の次回レポートをお待ちください。