スマートフォン市場が加速-求められる「モバイルサイトの携帯・スマホ両対応」

2010年10月26日、au からスマートフォンの新作「IS03」が発売された。仮購入予約数が25万件を突破するなど注目度の高さがうかがえたが、販売の初日から au ショップや量販店では売り切れが続出した。au の IS03だけでなく、10月末に NTT ドコモより発売された「GALAXY S」、11月12日にソフトバンクより発売された「HTC Desire HD」も売れ行きは好調だ。
筆者はスマートフォンの一般普及の先駆けとなる iPhone3GS を昨年夏ごろに購入した。当時は、Web の業界人などの「アーリーアダプター」が携帯電話との2台持ちで使っているところしか見なかったが、最近では一般のサラリーマンや女子大生、さらには中学生までも所持するのを街中で見かける。彼らはアーリーアダプターとは違い、携帯電話とスマートフォンの2台持ちではなく、スマートフォン1台持ちが多いようだが、それだけスマートフォンが一般化してきたということなのだろう。
本稿では、今後増加が予想されるスマートフォン1台持ちのエンドユーザーに対して、企業が Web でどのようなアプローチを行うべきか考えていきたいと思う。
■ スマートフォンはケータイなのか?パソコンなのか?
株式会社マーシュが2010年4月に調査した「モバイル機器に関する定期調査」によると、2009年8月調査ではパネラーの49.2%が「最も持ち歩きたいモバイル機器は携帯電話。携帯電話だけで十分」と答えたが、今年4月の調査では35.4%に減少。一方、「スマートフォンを最も持ち歩きたい」と答えたパネラーは4月調査で38.4%まで増加した。
どのモバイル機器を最も持ち歩きたいと思いますか
どのモバイル機器を最も持ち歩きたいと思いますか
(2009年8月、2010年4月 マーシュ調べ)
両者の割合が逆転したのに対して、「ノート PC を最も持ち歩きたい」の割合は横ばい。つまり、エンドユーザーはスマートフォンを『持ち運べるパソコン』としては見ておらず、あくまでも『ケータイ』にとって代わるものと考えているようだ。したがって、おサイフケータイや赤外線、「@ezweb.ne.jp」や「@docomo.ne.jp」のメール受信など、これまでのケータイの機能を備えている IS03や GALAXY の登場で、スマートフォン1台持ちのエンドユーザーは加速度的に増えることが予想される。いよいよ、アーリーアダプターからマジョリティーユーザーへの普及が本格的になると言うことだ。
■ 満を持してリリースしたスマートフォンサイトやアプリに当面期待はできない
ケータイ1台持ちのユーザーがスマートフォンへ移行し、スマートフォンのマジョリティユーザーにシフトしていくことを睨み、一部の金融系や通販・EC 系などの企業は、スマートフォン専用の Web サイトを開始している。しかし、単純に競合に先んじてスマートフォン向けの Web サイトやアプリをリリースしても、収益面での貢献はもう少し先になると考えられる。
アイシェアが2010年10月に実施した「携帯電話の利用状況に関する意識調査」では、スマートフォンをメインで利用しているユーザーは全体の8%程度で、まだ大半は携帯電話である。また、これまで携帯電話で利用できた公式メニューや少額決済などの Web サービスがまだ整っていないため、すぐに収益源となるスマートフォンサイトを立ち上げるのも難しいのが現状だろう。
現在利用している携帯端末のタイプは、通常の携帯とスマートフォンどちらですか
現在利用している携帯端末のタイプは、通常の携帯とスマートフォンどちらですか
(2010年10月 アイシェア調べ)
スマートフォンユーザーに限っては、アプリ経由で自社コンテンツを利用してもらうのも手だ。アプリであれば、常にスマートフォンの画面にアイコンが表示されるため、ブラウザよりも簡単にアクセスしてもらえる。しかし、アップルの App Store ではおよそ30万件、Android Market は10万件超えのアプリが登録されており(いずれも2010年10月現在)、自社アプリがその中に埋もれて日の目を見ることがないかもしれない。
スマートフォン市場は、キャリアやメーカーが新機種を次々と発表し、エンドユーザーへ普及しつつあるが、現時点ではまだまだボリュームは小さいので、収益性が乏しいまま、別途リソースと費用を投下してスマートフォン専用サイトやアプリを用意しなければならない状況である。
■ 「安く」「最小限の負荷」で、早々にスマートフォンサイトを用意するのがポイント
とは言え、これまでのケータイ市場を顧みる限り、先行者がその市場で優位なポジションを獲得してきたように、スマートフォン市場でも同様のことが起きると考えて差し支えないだろう。したがって、低コストかつ最小限の負荷で、いかに早く専用のチャンネルをリリースするかが、スマートフォンへ買い替えたエンドユーザーを効率的に囲い込むポイントと言えそうだ。そういった現状の中で、筆者が最近聞いたものでスマートフォン専用サイトを始める企業の担当者に人気なのが、既存の携帯サイトをスマートフォン専用サイトへ変換するサービスだ。
特に注目するサービスは、「music.jp」や「ルナルナ」を運営するエムティーアイの『モバイルコンバート』だ。マルチキャリア変換で10年近い歴史と実績があるモバイルコンバートは、同社のモバイル事業におけるデザイン・開発・運用のノウハウを活かした変換サービス。スマートフォンからのアクセスに応じて、携帯サイトをスマートフォンの画面サイズや使い勝手に合った最適なサイトに変換して提供できるので、ユーザーには『専用サイト』として見せることが可能だ。さらに対応範囲も広く、一般的な情報サイトだけでなく、携帯キャリアの公式サイト、課金サイト、コマースサイト、金融系のサイトなどでも幅広く利用できるなど柔軟性が高いことも特徴だ。

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