スーパーカブの重責担えるか…郵便配達バイクを電動化、ホンダの新たなる挑戦

郵便配達業務用として、ホンダの電動バイクが2019年度中(20年3月まで)に200台、2020年度中に2000台程度導入される。

【写真】日本郵便に導入されるホンダの電動バイク『ベンリィe:』

郵便配達用のバイクは全国で約8万5000台が走っているが、すべてがホンダ製。3輪の『ジャイロ』や『ベンリィCD125』などもあるが、郵政と聞いてまず思い浮かぶのは、やはり赤い『スーパーカブ』だろう。雪の降る北国でも故障せず毎日頼もしく走る。その頑丈さは、もはや説明不要だろう。

そんな偉大なる大先輩が務めてきた郵便配達業務を、これからは電動バイクが担っていく。しかし関係者によれば、2000台といっても全体から見ればほんの一部に過ぎず、まずは走行範囲の少ない都内や首都圏、地方の政令指定都市などに配備する計画とのこと。

考えてみればそうだろう、絶大なる信頼を得ている「カブ」の重役をいきなり一手に引き受けるのはあまりにも荷が重すぎる。

◆電動ビジネス車『ベンリィe:』がベース


配達業務中に故障やバッテリー切れなど許されない。ホンダも納入するからには本気だ。2000台が導入される郵便配達用電動バイク、ベースとなるのはビジネス用電動二輪車「ベンリィe:(ベンリィ イー)」シリーズで、ホンダは法人向けに2020年4月に販売開始する。

50cc相当の原付一種「ベンリィe:I(ベンリィ イー ワン)」と、125cc以下相当の原付二種「ベンリィe:II(ベンリィ イー ツー)」のほか、大型フロントバスケットや大型リアキャリア、ナックルバイザー、フットブレーキを標準装備した「ベンリィe:I プロ」と「ベンリィe:II プロ」がラインナップされる。

郵便配達用は赤く塗られた特別仕様車で、フロントキャリアに口が大きく開くカバン、リヤキャリアに大容量ラゲッジケースを標準装備。これまで活躍してきたスーパーカブとほぼ同じ装備、積載量と見ていいだろう。

ベンリィe:プロ同様、フットペダルでブレーキ操作ができ、コンビブレーキつまり前後輪連動式になっている。ブレーキレバーには駐停車時に便利なロック機構が備わっているのも変わらない。

ベンリィe:との相違点は、ウインカースイッチがハンドル左ではなく右側に移設されていること。これは郵政用スーパーカブから踏襲したもので、言うなれば郵便配達用バイクの伝統的装備。配達員からの要望に、ホンダはきっちり応えた。

また、ベンリィe:に備わるスゴイ機能が「リバース(後進)」。これは電動ならではの強みだろう。ポストからチョット行き過ぎてしまった……、なんてときも軽々と後進できてしまう。後退機能を使いこなす配達員、街で見かけることが多くなるかもしれない。

◆バッテリー切れの心配無用!


電圧48Vのリチウムイオンバッテリー2個を直列に接続させた96V系システムで、充電はバッテリーを車体から外して専用充電器でおこなう。約4時間でゼロの状態から満充電にいたる。

最高出力3.8PSを発揮し、ベンリィe:Iで30kg、ベンリィe:IIで60kgの最大積載量を積んだ状態で、傾斜12度の登坂性能を実現した。

気になる航続距離は、ベンリィe:Iが87km(30km/h定地走行テスト値)、ベンリィe:IIが43km(60km/h定地走行テスト値)。ホンダ関係者によれば、配達範囲を考慮すると1日稼動可能だが、昼休みに一旦郵便局に戻ってくる場合がほとんどなので、電池残量がもし減っていたならそのときバッテリー交換すれば心配ないとのこと。バッテリー残量は、メーターパネルで絶えず目視で確認できる。

また、スーパーカブがそうだったように、整備性に優れることも配達バイクには求められる。モーターはアルミ製のケースとカバーの中にステーターとローターを固定しユニット化された。モーター着脱がユニットででき、メンテナンスのしやすい構造としている。

静粛性に優れ、環境にも優しい電動バイクを、ついに郵政が本格導入。まだまだ台数は少ないが、都心などで走っている姿を見かけるかもしれない。まずは新宿、日本橋、渋谷、上野の4郵便局での使用を始めるから、そのエリアでは郵便配達のバイクを注視しておきたい。

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