スーパー駐車場で見かける古紙回収機 仙台のSKグループが設置進める 青森から滋賀まで全国最多390カ所

買い物ついでに古新聞や廃段ボールのリサイクルに協力してくれる人を増やそうと、商業施設の駐車場に無人のポイント式古紙回収機を設置する動きが広がっている。仕掛けているのは廃棄物処理事業を中核とする仙台市のSKグループ。設置した回収機は東日本を中心に390カ所と全国最多。商業施設には誘客促進の利点もあり、「四方良し」の取り組みが加速する。(報道部・喜田浩一)

2010年に導入

 仙台市太白区のみやぎ生協太子堂店には毎朝、3トントラックがやって来る。目指すのは広い駐車場の一角にある古紙回収機。車を横付けすると、2人の作業員は中にたまった古新聞などを手際よく積み込む。

 作業員の庄司大昂さん(38)は「付与ポイントが増えるキャンペーンの時には、1日2回回収が必要なぐらい古紙が集まる」と汗をぬぐう。

 回収機は屋外物置のようなたたずまいで、古新聞・チラシ、雑誌・雑紙、段ボール用の3種に分かれる。特徴は計量機能があること。古紙を持ち込んだ人がどれだけの紙を持参したか、計量と記録ができる。

 回収機は庄司さんらが勤める1973年創業のサイコー(宮城野区)が設置した。会社としての導入は2010年。当時は無償の回収機が一般的で、古紙を持参した人に還元があるポイント式は珍しかった。

 サイコーなど4社からなるSKグループの中核SKホールディングスの斎藤孝志社長(47)は、ポイント式に着目した理由を「古紙を効率的かつ安定的に集められると感じた」と振り返る。

 利用は簡単だ。利用者はまず回収機のある商業施設で専用カードをもらう。カードを回収機の読み取り機にかざしてから古紙を投入すると、重量に応じてポイントが付与され、カードに記録される。ポイントが一定数に達すると、店舗で使える割引券が発行される-という流れだ。

店舗にもメリット

 回収機の設置は、商業施設にとっても買い物客増が見込める利点がある。サイコーの取り組みに、最初に手を上げたのは、みやぎ生協(泉区)だった。

 環境管理室の一條智昭課長(66)は「家庭の古紙は回収先がなければ燃えるごみに出されてしまう。回収機は循環型社会に貢献する生協の理念にもぴったりだった」と振り返る。

 みやぎ生協は10年4月、岩切店(宮城野区)と塩釜杉の入店(塩釜市)で初導入。誘客効果を高めるため回収機は入り口近くに置いた。みやぎ生協の場合、古紙1キロに1ポイントを付与。300ポイントで300円分の割引券がもらえる。

 利用継続に工夫も凝らす。読み取り機メーカーにデジタル式ルーレットを特注。みやぎ生協の場合、古紙5キロ以上の投入でルーレットが回り、当たるとポイントが2倍になったり、10ポイント追加されたりする。

 「当たるかな」。親子連れなどが楽しみながら古紙を入れる姿が増えた。大掃除時期の12月や、引っ越しシーズンの3、4月には付与ポイントを増やすキャンペーンを実施し、店内放送でも周知する。

 評判はすぐに広まった。生協以外にもイオン(千葉市)、ヨークベニマル(郡山市)などの小売業者から回収機設置の依頼が相次ぎ、現在は青森県から滋賀県まで約390カ所を数える。遠地では地元の業者に古紙回収を依頼。買い取って製紙会社に納入し、SKグループの売り上げとなる。

 業界紙の古紙ジャーナル(奈良市)によると、ポイント式古紙回収機による設置店舗数はSKグループが全国一。グループの古紙回収量は事業系古紙などを含め年間15万トンを超え、国内ベスト5に入る古紙問屋に成長した。

子ども食堂など市民応援 ポイントで社会貢献も

 ポイント式古紙回収機の設置店舗数で全国トップを走るSKグループ。買い物券還元の仕組みとは別に、「もう一つのポイント制度」でも社会貢献に励む。

 その名は「リサイクルポイント倶楽部(くらぶ)」。市民が古紙回収を通じて子ども食堂運営や災害支援活動を支えるユニークな取り組みだ。

 趣旨に賛同する市民はまず、専用サイトで会員登録。SKグループが設置する最寄りのポイント式古紙回収機に古紙を持ち込むと、ネット上で「クラブコイン」が付与される。

 500クラブコインがたまると、SKグループは100円を拠出。災害支援や環境保全、子ども食堂など、会員が選んだ活動団体に寄付されるという流れだ。

 全国的にも珍しい取り組みの背景には、本業である古紙回収を取り巻く変化がある。

 「古紙回収といえば、ちり紙交換と集団資源回収しかなかった」。SKグループ原点のサイコーを1973年に立ち上げた斎藤孝三会長(70)が振り返る。

 製紙会社の買い取り価格で浮沈する古紙相場は、オイルショックや円高などによる乱高下を繰り返しながら、時とともに下降曲線をたどった。

 資源回収の担い手だった子ども会や町内会も、少子化や地域コミュニティーの衰退で弱体化。古紙を待つばかりでは経営は成り立たなくなった。

 斎藤会長は「子ども会を含め、地域を支える団体の活動が弱まっている」と懸念。2代目社長となった長男の孝志さんらは、古紙回収と地域振興を両立する倶楽部の仕掛けを思い立ち、2020年に立ち上げた。

 倶楽部は今夏、古紙の供給元を個人だけでなく、企業・商店にも対象を広げた。事業者向けサービスは「Pocci!(ポッチ)」。古紙排出の仕方を見直すだけで、簡単に社会貢献ができる手軽さを表現した。

 会員企業は古紙を1キロ出すごとに1ポイントがもらえ、1ポイントは1円として活動費不足に悩む地元の文化・スポーツ団体、環境保護活動などに寄付できる。

 SKグループは8月、ポッチを地域で広めてもらおうと趣旨に賛同する宮城県利府町と包括連携協定を結んだ。一民間企業の試みは自治体を巻き込み、次の段階に進もうとしている。

 斎藤会長は「社内では常に『時代の先を読め』と言い続けてきた。その成果が表れてきた」と目を細める。

 SKグループの理念は「ちょっと無理して地域を元気に地球を元気に」。グループの源であるサイコーは23年、設立50周年の節目を迎える。

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