特定外来生物の毒グモ・セアカゴケグモの生息域が、名古屋市内のほぼ全域に拡大している。二〇一四年度は前年度の約一・三倍の千百六十匹が確認された。かまれると危険で、市は「見つけても素手で触らないで」と注意を呼び掛けている。
セアカゴケグモは、オーストラリアや東南アジアなど熱帯、亜熱帯地域に生息する。体長は脚を含めないで雌が一センチ、雄は三ミリ程度。雌は黒色で腹部は 丸く、背に赤いまだら模様がある。かまれると、針で刺されたような激しい痛みや吐き気などの症状が出ることがあり、海外では死亡例もある。
貨物などを通じて国内に入り込んだとみられ、市内では、〇五年八月に緑区の大高緑地内で初めて確認。これまでに千種区を除く十五区で見つかっている。市 環境薬務課によると、一三年度は八百六十三匹が確認され、一四年度は急増。比較的暖かい側溝のふたの裏側や自動販売機の下などでよく見つかるという。
今のところ、かまれたとの報告はないが、市は「一定数が冬を越して定着している」と判断。市内全域で注意を促すポスターの掲示や、保健所職員による講習会の開催などを実施した。
市の担当者は「高齢者や小さな子どもがかまれると重症化することもある」と指摘。「公園などを利用する際は十分注意してほしい」と話している。
◆「見つけたら踏みつぶして」 港保健所のポスターが話題に
市内で最多のセアカゴケグモが確認されているのが港区だ。港保健所は今年、区内限定のポスターを独自で作成。「見つけたら踏みつぶして!」。こぶしを握り締めた若い女性が呼び掛ける勇ましいポスターで、インターネット上でも話題になっている。
区内では二〇一四年度、市全体の65%にあたる七百五十七匹が確認された。二十ある小学校区のうち十九学区に広がり、小中学校内でも見つかっている。
港保健所はこれまで、ホームページで生息しやすい場所や駆除方法などを伝えてきた。だが「見つけたが、どうすればいいのか」といった電話相談が一四年度 に二百十件余も寄せられ、理解は進んでいないのが現状。このため区独自の予算十万円余を使い、ポスターを作ることにした。
スカート姿の若い女性が、力強く右足でクモを踏みつぶすイラスト。柵の間に見つけた場合は、木切れなどで追い出して踏みつぶす方法も紹介している。「おとなしいから襲ってきません。落ち着いて対処して」と呼び掛ける。
ネットでは「無慈悲すぎる」「(クモに)同情した」などと話題に。担当した港保健所生活環境課の西口淳さん(45)は「役所が作るには刺激が強すぎると の懸念もあったが、区民の目を引くことが大前提。子どもたちにも関心を持ってもらいやすいようにした」と説明し、「来年度も、今回のキャラクターを子ども 向けの注意喚起に活用したい」と話している。