食品に含まれる放射性セシウムの新基準値(1キログラム当たり100ベクレル)が導入される4月を目前に、県が検査体制の構築に苦慮している。精密検査を行う目安が250ベクレルから50ベクレルに下がった上、国が今月示した指針によって検査対象の全体像が読み切れなくなったためだ。県は「きめ細かな対応は当然だが、国は地域の実情に見合った対応をしてほしい」と困惑している。
国が新指針を示したのは12日。過去に出荷制限の対象となるなどした17都県に、1キログラム当たり50ベクレルを超えた品目の重点調査を要請した。
このうち出荷制限が複数品目あった宮城など6県には、他県で50ベクレル超が検出された品目についても、それぞれの県内の主な産地となる市町村ごとに週1~3検体を調べるよう求めた。
県が過去に精密検査した農林水産物1132検体のうち、新基準値の100ベクレルを超えたのは47検体。県は4月以降、出荷制限中の露地物原木シイタケや土壌の放射性物質濃度が高い地域を軸に、生産量の多い品目の検査に力を入れる方針だった。
新指針で重点調査の対象が広がったことで、県は「検査が必要な数の全体像が把握できない」(食産業振興課)状態になり、体制の見直しが必要になった。
ただ、指針は重点調査の対象地域を「主要な産地」とし、明確な線引きはしていない。21日に国が開いた自治体向けの説明会でも、十分な回答はなかったという。
県は県産業技術総合センターのゲルマニウム半導体検出器や精密検査に対応するよう改良した県内7カ所の簡易測定器、民間検査機関の機器をフル回転させ、新基準値に対応する考え。同課は「検査範囲が曖昧な新指針への対応は、段階的に取り組んでいくしかない」話している。