インターネットの動画配信サービスで、映画やドラマなどに、セリフだけでなく背景や音の描写も文字で表す聴覚障害者や高齢者向けの日本語字幕をつける動きが広がっている。背景の一つに、「誰一人取り残さない」という国連のSDGs(持続可能な開発目標)の考え方の浸透がある。
独自コンテンツ(作品)を30言語以上で世界中に配信している米ネットフリックス。今年の聴覚障害者向け日本語字幕付きコンテンツの数は前年比15%増となる見通しだ。聴覚障害者向け字幕の専門チームを編成して制作しており、日本語での制作数は、英語に次いで2番目に多いという。
Hulu(フールー)は2018年以降、自社制作の独自コンテンツを中心に聴覚障害者向けの字幕に取り組んでいる。自動的に音声を文字化する「音声認識ソフト」は使わず、担当者が聴覚障害者が楽しめるような表現を考え、字幕を制作しているという。
今後も「必要度の高いサービスなので、費用と手間をかけて、拡大していく」(字幕制作担当者)考えで、他社制作の作品にも字幕を広げたい考えだ。
デジタルコンテンツ協会によると、動画配信市場は20年に前年比34%増の3710億円に上るなど、急拡大している。字幕の表示・非表示を簡単な操作で切り替えられる「クローズド・キャプション」方式が導入されているサービスも多く、聴覚障害者の生活にも浸透しつつある。
社会福祉法人・聴力障害者情報文化センターの早川代志子さんは「テレビ番組の多くで字幕がついている時代だ。若い世代の聴覚障害者は、動画投稿サイトも含め、字幕利用が当たり前になりつつある。動画配信サービスでのさらなる拡大を期待したい」と話している。