ソニー「PS4」に完敗の任天堂 ソフト開発会社が逃げ出し、人気ソフトを作れない「WiiU」の性能不足

平成26年3月期連結業績予想を大幅に下方修正した任天堂。家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」の発売以来、約30年間にわたってゲーム業界をリードしてきたゲーム帝国に何が起こっているのか。凋落(ちょうらく)の原因を探る。
売り殺到 任天堂株、一時2700円安
 20日午前9時。任天堂株は売り気配で始まり、一時は前週末比2710円安まで売られた。
 終値は900円安の1万3745円。10日には昨年来高値を記録するなど高値圏にあったが、「17日の業績修正発表で、任天堂の成長神話は崩壊した」(業界関係者)。
 17日の発表で平成26年3月期連結営業損益を1千億円の黒字予想から350億円の赤字に下方修正。売上高もピーク時の3分の1にまで減少する任天堂。3期連続の営業赤字見通しとなったが、深刻なのは「3期連続」よりも「円安なのに利益を出せなかった」(関係者)ことだ。
 任天堂の海外売上高比率は7割を超える。それだけに前期、前々期の赤字は円高が主な要因だったが、今期は円安で自動車や家電など輸出業の多くが収益を改善する中、任天堂は取り残された。主力と位置付ける据え置き型ゲーム機「WiiU(ウィー・ユー)」をはじめ、商品自体の売れ行きが伸びなかったためだ。
 「年末商戦はゲーム機本体、ソフトともに売れなかった。円安なのに利益を出せなかった責任を感じている」。17日、大阪市内で会見した任天堂の岩田聡社長もこう認めた。空回りする危機感 当初から不振のWiiU
 任天堂は、年に数本しかソフトを買わない「ライトユーザー」に支えられてきたといわれるが、その多くがスマートフォン(高機能携帯電話)向けのゲームに移行。危機感が募り、ゲーム専用機で熱心に遊ぶ「ゲーマー」を獲得するため平成24年12月にWiiUを発売したものの、当初から販売は不振をきわめた。特に主戦場の海外で売れず、「ゲーム専用機は過去の遺物」と言い放つ専門家も出るほどだった。
 ところが、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が昨年11月に欧米で発売した据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」は空前の売り上げを記録。1カ月強で420万台を販売し、1年先行して発売したWiiUの累計販売を抜き去る勢いで売れ続けている。このPS4のヒットは、スマホが浸透してもゲーム専用機にいまだ潜在需要があることを証明してみせた。
ソフト開発会社が敬遠する“性能不足”
 なぜ、WiiUはゲーマーの心をつかむことができなかったのか。
 専門家はその理由をインターネットとの連携を含めた「性能不足」とみる。WiiUの性能は、PS4の1世代前のPS3とほぼ同等とみられている。ソフト開発会社の間では「性能的に時代遅れのゲーム機」との評価が定着し、最先端のネット対応ソフトを開発しても動作しないなど開発効率が悪く、敬遠されがちという。このため、魅力的なソフトが登場せず、本体も売れないという悪循環に陥っているというわけだ。 携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」は好調を維持しているものの、主流の据え置き型ゲーム機が売れないと、収益改善はおぼつかない。
 一方、ライバルのSCEは、今夏からネットを通じて情報を処理する「クラウド技術」を活用してゲームを配信する「PSナウ」のサービスを開始。時代の最先端を行く姿勢はゲーマーの支持を得ている。
 PS4は来月22日、日本でも発売される。「ゲーマーはPS4、ライトユーザーはスマホ」という流れが出来上がりつつある中、任天堂がこの劣勢を覆すのは容易ではない。

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