「平井がうるさく言っている、規模を追わずに”違いを生む”という考えが浸透してきた」――
10月29日に行われたソニーの2015年4〜9月期(第2四半期)決算会見。吉田憲一郎CFO(最高財務責任者)は、復活の要因をそう分析する。
復活の牽引役はイメージセンサー
第2四半期の営業利益は1849億円(前年同期は158億円の赤字)と大幅な黒字化を達成。営業利益1849億円という水準は、この10年間で最高だった、2007年度(営業利益1897億円)にほぼ匹敵する。
黒字化を果たした理由は、前年にあったスマホ関連の減損1760億円がなくなったことが大きい。ただし、既存事業の収益も回復傾向にある。
復活の牽引役となっているのは、スマホやデジタルカメラに用いられるイメージセンサー事業と、プレイステーションが主体のゲーム事業だ。ソニーはこれらの分野を「成長牽引領域」と位置付け、拡大策に打って出る方針だ。
とりわけ世界シェア首位のイメージセンサーに関しては、7月に実施した公募増資などで得た4200億円を原資に、生産能力を約5割拡大させるなど、積極的な設備投資を行っている。
また決算発表前日には、東芝のイメージセンサー生産設備の買収を公表。生産能力の不足解消に向けて、対策を講じる。
吉田CFOは、イメージセンサー事業について「現在、人的資源が逼迫している。東芝の設計、生産、営業も含めて、事業に関わる人が当社に来てもらえるならありがたい」と、生産設備にとどまらない受け入れを示唆している。
イメージセンサーは車載向け開拓を見据える
現在、ソニー製のイメージセンサーの大半は単品で販売され、他社がモジュールへと組み立て、スマホメーカーに出荷している。ソニーは2013年にモジュール事業に参入したばかり。
今後は、単品販売だけではなく、カメラモジュールの内製化を進める狙いだ。生産から組み立てまで請け負えるようになることで、将来は車載向けの開拓という目標も見えてくる。
吉田CFOも「モジュールは将来のイノベーションがあると考え、取り組んでいる」と自信を見せる。
イメージセンサーの好調に支えられ、第2四半期までの業績は好調だった。
ただ、ソニーは5月に立てた2015年度の営業利益3200億円を据え置いている。映画事業の不振やリチウムイオンポリマー電池の競争激化を理由に下振れリスクがあると見るからだ。
平井一夫社長は、今年2月の経営方針説明会で「2014年度までの構造改革フェーズから、2015年度は成長フェーズに移った」と宣言している。
第2四半期を過ぎても、手綱を緩めることなく好調を維持し続けられるか。それはひとえに、イメージセンサー事業の成長のスピードにかかっている。