ソフトバンク「改善」苦戦…超小型局、設置協議で反発続出

家庭内に設置してブロードバンド(高速大容量)通信網を携帯電話の通信回線として利用する超小型基地局(フェムトセル)の設置をめぐり、ソフトバンクモバイルと通信事業者との協議が難航している。データ通信量の急増で携帯電話が「つながりにくい」といわれるソフトバンクはフェムトセルで“汚名返上”を急ぎたい考えだが、9月中旬までに契約できたのは地方のCATV(有線放送)会社など30社程度。他の通信大手やインターネット接続事業者(ISP)との協議は進まず、本格展開には時間がかかりそうだ。
 ソフトバンクは5月、「どこのブロードバンド回線にもつながる」をうたい文句に、総務省の指針で定められていた事前協議なしにフェムトセルを無償で希望者に設置しようとしたが、各社の反発で計画を撤回。同省の指導で改めて事業者と個別に協議を開始し、契約した通信事業者と順次、接続を広げていく方針だった。
 ただ、現時点で接続可能なのはグループ会社のヤフーBBと、半年前から協議してきたNTT東西の光サービス「フレッツ光」。フェムトセルの設置申込数は約3万人だが、実際の設置は「4けたを超えた程度」(ソフトバンク)という。
 ISP約500社、CATV約400社といわれる事業者との協議は不調で、あるISP大手は「話はあったが保留のまま」と契約に消極的な事業者が多い。「無断でただ乗りしようとする会社には懐疑的にならざるを得ない」(通信事業者幹部)といった声も根強い。
 携帯電話事業者にとって、フェムトセルで家庭内の端末から光回線などにデータ流すことができれば、通信品質の向上や電波状況の改善が期待できる。このため、NTTドコモやKDDIもグループまたは自社内でフェムトセル設置を始めている。
 総務省の基地局免許数(7月末時点、中継局は除外)によると、ソフトバンクの第3世代携帯電話(3G)基地局は約4万7000カ所。ドコモの約9万カ所、KDDIの約5万1000カ所に比べ少なく、孫正義社長は“電波改善宣言”を打ち出し今年度の移動体通信向け設備投資を前期比7割増の3150億円に引き上げた。しかし、米アップル製の高機能携帯電話「アイフォーン」や多機能情報端末「アイパッド」の好調な売れ行きで、画像データ量が急増。フェムトセル設置を急ぐあまり、総務省と業界団体がまとめたガイドラインを無視したことで業界が強く反発している。(芳賀由明)
【用語解説】フェムトセル
 1000兆分の1を意味する単位「フェムト」から、極めて狭い範囲の「セル」(通信エリア)やその超小型基地局を指す。携帯電話契約者が家庭やオフィスで端末を使うとき、無線をキャッチして光サービスなど既設のブロードバンド回線にデータを流す。エリアは半径10メートル程度。総務省は2008年10月に基地局免許届出の規制を緩和し、緊急通報や障害時対応などのガイドラインを策定。事業者同士の事前協議を求めている。

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