ソフトバンクモバイル(SBM)が、米アップルの「アイフォーン(iPhone)4S」発売にあたって仕掛けた「iPad 2」販促キャンペーンに疑問の声が上がっている。
データ定額料金やウェブ基本料を最低ゼロ円にするとうたうが、端末はタダではない。さらに使い方によっては、通常の契約より割高になる恐れもあるからだ。
100MB超えると最大4980円
無線LANを使わないとかえって損(写真は初代iPad)
無線LANを使わないとかえって損(写真は初代iPad)
SBMのiPadキャンペーンでは、iPhoneの新規契約者や、既存顧客のうちiPhoneに機種変更する、あるいは既にiPhoneを使っている人が「iPad2」を契約する際に、料金面で優遇するという触れ込みだ。ウェブサイトには大きく「月額料金0円~」と表示されている。
具体的にはパケット定額料金やウェブ利用料について、1か月当たりの通信量100メガバイト(MB)までを無料とするものだ。ただし100MBを超えるとパケット利用量に応じて料金が発生し、111.5MB以上は一律4980円が徴収される。315円のウェブ利用料も加わる。
料金の詳細を見ると、例えばiPad2の「Wi-Fi+3G、16GBモデル」を購入した場合、「割賦支払金額」が月額1860円、通信料金からの割引が1860円とある。この場合、データ通信やウェブの利用を100MB未満に抑えればタダで手に入るのか、と思うがそうではない。「割賦支払金額」は端末の価格を表しており、これは契約期間中の2年間は分割で支払わねばならないのだ。
仮に通信量が100MBを超えて上限に達した場合、月額の支払いは端末代にパケット料、ウェブ利用料が加算される。111.5MB以上なら7155円だ。ただし、ここから1860円が割り引かれるため合計金額は5295円となる。
問題は「100MB」という通信量がどの程度か、という点だ。SBMのカスタマーセンターに聞くと、おおよその目安として「ユーチューブで動画を1時間ほど閲覧した程度」に相当するという。ウェブの接続時間については「サイトによって(サイズが)まちまちなので、一概には言えません」と話した。
孫正義社長は2011年10月7日の記者会見で、「ソフトバンクでiPadを使っている人の4割以上は100MB未満で済んでいる」と明かし、キャンペーンを利用するメリットをにおわせた。
3Gだけでデータ通信「それほど多くないのでは」
パケット通信料は、3G回線を使ってインターネットに接続する場合に課金される。そこで、例えば無線LANルーターを使って家庭のネット環境をLANケーブル接続から無線に変えれば、家の中でiPadを使う際に3G接続でなく「Wi-Fi接続」を利用できる。これなら動画のように大容量コンテンツをダウンロードする場合でもパケット料はかからない。iPad 2を購入した後、極力3G回線への接続を避ける使い方をすれば、「月額料金ゼロ円」の恩恵を受けられるかもしれない。
だが、100MB未満に抑えるのが簡単かどうかは微妙だ。あくまでiPhoneでの一例だが記者の場合、自宅や職場では無線LAN接続を利用して、3G接続は片道1時間程度の通勤電車内や外で食事をしている時間にほぼ限られる。この時は主にウェブの閲覧で、動画はまず見ない。それでも1か月のパケット量は200MBを上回る。
iPhoneの方がiPadよりも手軽に使えるためネットへの接続機会は多いだろうが、iPadでも無線LANに一切頼らず3G回線だけで頻繁にインターネットを利用し続けたとしたら、100MBはあっさり超えてしまう。
キャンペーンとは関係なしにiPad 2を契約した場合、料金はどうなるか。SBMのサイトを見ると、「Wi-Fi+3G、16GB」モデルの場合、月額では端末代が2360円、データ通信料は常に一定のプランで4410円、ウェブ使用料が315円となる。ここから、2年契約による割引として2360円が差し引かれ、合計は4725円となった。キャンペーン価格でも100MBを超えた場合は、最大5295円。通常契約の場合は事務手数料やユニバーサルサービス料がかかるが、それでも月額料金に換算すればキャンペーン価格より低額なのだ。
SBMの広報にこの点を確認すると、料金の差を認めたうえで「頻繁に(3G接続で)使う場合は、確かに(通常契約の)データ定額プランの方が料金を低く抑えられるかもしれません」と話す。一方で、無線LAN接続の機会が最近では増えている点に触れて、「3G回線だけでデータ通信している方もそれほど多くないのでは」と見る。キャンペーン内容を享受できるかは、使い方次第というわけだ。
しかしネットには「無料じゃなくてただの分割払いね」「機種代はかかります!とでも大きく書いてればよかったのでは」と、キャンペーン価格の「分かりにくさ」を指摘する声もある。