ソーシャルメディア・ガイドライン 企業や自治体で制定増加加

■リスク管理の“切り札”
 ブログやツイッターなどの失敗を未然に防ごうと、インターネット上での振る舞いや基本マナーを定める「ソーシャルメディア・ガイドライン」を制定する自治体・企業が増加している。広報・PRだけでなく、立場を明らかにして個人的に利用した場合でも、“炎上”が組織に飛び火するケースが少なくないことから、専門家は「社員や職員の意識を変えるのに有効」と評価。まだ一般に普及しているとはいえないのが現状だが、ネット社会の進展に合わせて導入が加速しそうだ。
 ◆千葉市が先駆け
 「基本的人権、肖像権、プライバシー権、著作権等に関して十分留意しなければならない」「攻撃的な反応があった場合には、冷静に対応し無用な議論となることは避けなければならない」
 千葉市は今年8月、全国に先駆けて、「ソーシャルメディアの利用に関するガイドライン」を公表した。職員の公私にわたるソーシャルメディア利用のトラブルを防止するのが狙いで、投稿してはいけない情報とともにトラブル発生時の対応の仕方も列挙、Q&Aまで付されている。
 同市情報企画課では「ツイッターのダイレクトメッセージを不特定多数に送ったことが原因で炎上してしまったコーヒー会社など、民間企業の事例を参考に作成した」と話す。
 「市役所と市民の垣根を下げよう」と、職員のほぼ全員がツイッターのアカウントを取得している佐賀県武雄市も同月、千葉市にならってガイドラインを作成。“ツイッター市長”として知られる樋渡啓祐市長が、一人一人に注意事項を説明するDVDを見せながら講習を行ったという。
 住民とのコミュニケーション手段としてツイッターのアカウントを取得する自治体は増えているが、ガイドラインの策定はまだまだ珍しい。
 ◆ソフトバンクも導入
 全社員約2万人にツイッターのアカウントを取得するように指示したソフトバンクグループもツイッター利用のガイドラインを導入済み。「『◯◯社の新サービスは、うちのまね』は×」『芸能人の◯◯さんが◯◯サービスに加入しました』も×」など、孫正義社長自らが60万人以上のフォロワーを持つだけあって、詳細な内容だ。
 このほか、IBMやNECなどでも独自にガイドラインを定めており、民間では自治体ほど珍しいものではなくなってきている。
 その背景には、立場を明らかにした投稿が、所属する組織に大きな影響を与える事例が後を絶たないことがあり、利用が拡大を続けるソーシャルメディアのガイドライン制定の必要性も高まるばかりだ。
 関西大総合情報学部教授の亀井克之氏(リスクマネジメント学)は「ことが起こる前に先手を打って定めておくことで、社員の意識を変えようとしているうえ、企業として説明責任を明確にできる。前向きなリスクマネジメントだ」と評価し、今後、ガイドラインを制定する企業が増えていくとみている。(大坪玲央)

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