観光都市・奈良の表玄関の一つ、JR奈良駅東口広場などへのタクシー乗り入れをめぐり、奈良市が突如「協力金を支払ってほしい」と事業者側に打診し、困惑が広がっている。乗降場を整備し、条例で使用料を徴収している自治体もあるが、奈良市のケースはいずれも「市道」で徴収を義務化できない、つまり徴収する“法的根拠”がない状態。徴収方法も未定、使い道もはっきりしない状態のままで「来年度にも徴収を始めたい」とする市の姿勢に、反発の声も上がっている。
市が「協力金」を求めているのは、JR奈良駅東・西口広場や近鉄学園前駅南口、近鉄高の原駅など計8カ所で、いずれも「市道」扱い。このうち整備工事が完了し、今月、JR西日本から市に管理が移管されたJR奈良駅東口広場のタクシー乗降場では、これまでJR西が、1台あたり月7千~8千円の施設使用料を徴収してきた。
しかし、これまで無料だったほかの7カ所についても徴収を始める方針を打ち出したことに事業者側は反発。市は9月19日、事業者を対象に説明会を開き協力金への理解を求めたが、徴収名目や金額、具体的な方法などは明示しなかった。
国土交通省自動車局旅客課などによると、ターミナルへタクシーが乗り入れる場合、徴収する料金については道路法と道路運送法上のいずれにも規定がなく、「道路の管理主体の判断となる」が、道路運送法に基づいた使用料徴収はできないとしている。鉄道事業者が管理する施設への乗り入れについて、事業者が「構内権」に基づいて使用料を徴収している例はあるものの、「自治体が道路として定めている駅前広場で料金をとる例は聞いたことがない」(国交省)という。
市は「あくまでも『協力』を求めたい」とする一方で、JR奈良駅東口広場を整備する際、約4億8200万円の費用をかけていることなどもあって、「来年度にも徴収を始めたい」と強気の姿勢。仲川げん市長は「協力金は管理費の基金として積み立て、事業者の協力のもとに安定的な管理運営をしていきたい」と話すが、「こちらが協力金を支払う代わりに、市は何をするのか、納得できる説明が必要だ」(ある事業者)と反発する事業者側との間で議論はかみあわない。
タクシーの乗降場をめぐっては、奈良県大和高田市が平成19年4月に駅前広場管理条例を施行。タクシーは1台月5千円、バスは同1万2千円を「使用料」として徴収している例もあるが、奈良市が協力を得られるかどうかは、不透明だ。