タコづくしの明石、いざ“食い倒れ”ツアーへ!

 初夏となり、兵庫県明石市では名物のタコが旬を迎えている。瀬戸内海の良質なエサを食べ、激しい潮流に鍛えられたタコの足は筋肉質で歯応えも抜群。ゆでダコや造り、明石焼といった定番はもちろん、たこバーガーなど変わりダネメニューも充実。いざ、タコづくしの明石“食い倒れ”ツアーへ。(清宮真一)
 明石市でおいしいタコが捕れるのには理由がある。沿岸部に「鹿ノ瀬」といわれる砂地の好漁場が広がり、エサとなるプランクトンやエビ、カニが集まるのに加え、速い潮流のおかげで、タコの足が太く短く筋肉質に発達するからだ。
 JR明石駅から南に徒歩5分の市卸売市場分場。ここでは午前11時半から、「昼市」「昼網」などと呼ばれる競りが始まる。
 鐘の音とともに「しゃあえいがぁ」と威勢のいいかけ声。業者らが指で買値を示し、取引が進む。タコはもちろん、さまざまな魚介を詰めた発泡スチロールを抱えた業者が周辺を走り回り、水しぶきも飛んでくる。活気のある光景だ。
 競りが早朝ではなく、昼前からというのは全国唯一という。林利夫・市広報戦略担当課長は「漁師は午前4時ごろ出漁して、とれた魚を午前中に市場に持ち込みます。地元だけでなく、神戸や大阪、京都にも、より新鮮な魚をその日のうちに届けられるので、昼網が定着しました」と話す。
 さて、明石に来たら、やっぱり「明石焼」。市内には約70店が軒を連ね、家族ぐるみで営むところが多く、店ごとに味付けや焼き方が違う。
 そのうちの1店を訪ねた。できたての明石焼を三つ葉を浮かべた出汁にひたしてほおばると、アツアツとろとろの生地が飛び出し、思わずハフハフ…。タコはサクッとかみ切れる。
 続いて、昼網近くの「魚の棚(うおんたな)商店街」へ。100軒余の鮮魚店や乾物店、加工品販売業者が集まる“市民の台所”だ。ここでは、ぶつ切りのタコを魚のすり身でまとめた焼きたての「たこちくわ」、タコせんべいの「ぺったん焼き」、「たこコロッケ」などを食べ歩ける。
 さらに、地元漁師9人が経営する明石港の食堂「明石漁師めし 新浜」ではタコ飯にタコの造り、天ぷら、やわらか煮が付いた「たこ定食」が堪能できる。
 締めは「ナガサワ食品」(明石市魚住町)が開発した新メニュー「明石たこバーガー」と地ビール。バーガーにはトマト味と照り焼き味の2種類がある。大西年久・総料理長は「タコの食感を生かすように、野菜や魚のすり身揚げといった組み合わせの食材に悩みました」と語る。
 実は明石は全国2位の、のりの産地でもある。2009年度の生産量は6・5億枚。新浜広報の松本真依子さんは「『明石のり』は肉厚で食べ応えがあり、地元一体となってブランド化に取り組んでいる」という。
 東京からは東海道新幹線・新大阪経由、東海道・山陽線新快速で約3時間半。詳しくは明石市観光振興課((電)078・918・5018)。

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