タニタ社食「1食500キロカロリー」は意外と簡単!?

健康機器大手のタニタは多様な製品群だけでなく、レシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」で広く知られるようになった。2010年2月の第1弾と11月発行の続編の2冊で計420万部に達し、今も売れ続けている。
 メニューの基本は、1食500キロカロリー前後のヘルシーランチ。もっとも、このカロリーで十分な味とボリューム、そしておいしそうな見た目を実現するのは簡単ではなさそうに思える。実際の社員食堂はどんなところなのだろうか。それを確かめる機会はこの夏にやってきた。試食会の案内が届いたのだ。
 ピーマン、カリフラワー、タマネギにヤングコーンのサラダ。中華風キュウリにジャガイモのみそ汁、メーンは韓国風焼肉のレタスと貝割れダイコン添え-。7月下旬の献立は「夏バテ予防ヘルシーメニュー」。ビタミンB1を含む豚肉と、体を冷やす作用のある夏野菜のキュウリがポイントという。
 一汁三菜で焼肉はボリュームもあるが、白米100グラムと合わせて完食しても510キロカロリー。薄味を想像していたが焼肉は豆板醤の辛みがしっかりとあり、サラダも酢や粒マスタードのパンチが効いていておいしい。
 「ヘルシーでも味がおいしくなければ社員のみなさんが来てくれなくなってしまう。味の工夫に常に取り組んでいます」
 こう話すのは、社員食堂のメニュー開発や調理などを担当する栄養士の荻野菜々子さん。荻野さんはベストセラーとなったレシピ本の監修にも携わった。
 いずれのメニューも塩分は3グラムまでに抑え、野菜を150~200グラム使う。肉は皮や脂身を取り除き、オーブンで調理してカロリーをカット。野菜は大きめに切ることで噛む回数が増え、満腹感につながるという。
 塩分を控えめにしてもハーブやスパイスを工夫することで、しっかりとした味付けになる。「特別なものは必要なく、家庭でもできます」と荻野さん。
 社員食堂ができたのは1999年。肥満の予防と改善でナンバーワンの「トータルサポート企業」を目指すだけに、社員の健康管理は欠かせない。
 食堂のスペースは以前、地域の住民らに運動や食事をアドバイスする「ベストウェイトセンター」だった。その際の食事指導が現在のメニューの前身。当時は減量が目的だったため味よりカロリーが重視されていたが、前任者に続いて荻野さんが日々、改良に取り組んでいる。
 食堂は昨年9月から今年3月にかけて改装し、カフェ風の内装や環境負荷を低減できるLED(発光ダイオード)照明を導入。居心地の良さからか利用する社員が増え、忙しく切り盛りするが「残飯の量がどんどん減り、『今日おいしかったよ』と言ってもらえるとうれしい」と、荻野さんは笑顔を見せた。(金谷かおり)
【会社概要】タニタ
 本社は東京都板橋区前野町1の14の2。1923年、シガレットケースや貴金属・宝飾品を製造販売する谷田賀良倶商店として創業。59年にヘルスメーターの製造を始め、売り上げ台数は79年に1000万台を突破。92年に世界初の体内脂肪計、2001年に世界初内臓脂肪チェック付き脂肪計をそれぞれ発売。歩数計や尿糖計、血圧計など幅広い健康機器を手掛けている。

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