タワマンの大規模修繕計画「3億円」も過大に費用計上か…住民有志の見積もりで判明!5億円の工事費が、計画では「8億円」にされていた【マンション管理クライシス】

高額化しがちと言われるタワーマンションの大規模修繕工事。これを見据えて、毎月の修繕積立金も年々高額化している。しかし、当初からの工事費用の計画に疑問を持った、あるタワマンの管理組合では、管理会社とは別ルートで見積もりを取り直した。すると、その“常識”とは異なる結果が出てきた──。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて情報を参考にしてください)

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管理組合で見積もりを取り直すと「60%増し」が発覚

関東の築20年、350戸のオフィス店舗を含む複合型タワマン。1回目の大規模修繕工事の計画が進められてきたが、管理会社が策定していた高額な工事計画を巡って、疑問に思った管理組合では、独自の見積もり取得に奔走していた。そして、今年に入り、計画より格段に安価に工事ができることが判明したという。

同タワマン大規模修繕工事の見積もり取得をサポートした、修繕工事の支援サービス「スマート修繕」代表の豊田賢治郎氏がいう。

「このタワマンの長期修繕計画においては当初、8億円(税込み)の工事費を見込んでいました。ただ、複合であることやタワマンであることを鑑みても、『割高では?』と感じる金額帯でした。そこで管理組合では『管理会社以外の提案も受けて、妥当性を確認したい』ということになり、我々がサポートすることになったのです。

住民アンケートによる要望の反映や、建築士による建物診断、ドローンを活用した外壁調査のうえで、複数の工事会社から相見積を取得したところ、工事の金額は約5億円に収まりました。施工範囲は外壁塗装のほか、シーリングは長周期化対応などフルスペックの工事仕様で、施工会社は業界トップクラスの大手となります。

この費用は戸あたり約140万円であり、通常のタワーマンションの大規模修繕費用としてはリーズナブルで、一般的な中規模マンションより少し高い程度の金額となります」

必要性のない高額な維持費は「資産性悪化」に繋がる

長期修繕計画(長計)は、毎月の修繕積立金算定の根拠とするため、将来的な工事費をあらかじめ見込んでおくものだ。資金不足に陥らないように、多めに算定して徴収するのは一理あるようにも思える。

しかし、仮に実際の工事費より60%も多く見積もっていたとすれば、さすがにどんぶり勘定も甚だしく、営利的な“水増し”を疑われても仕方のない水準とも言えるだろう。管理会社は工事からも収益を得るが、その管理会社自身が長計を作成しており、“お手盛り”になりやすい。

そして高額な工事費の見込みは、修繕積立金の形で、必要のない金銭負担を所有者に強いて、経済的ダメージをもたらしてしまう。また、高額な維持費(積立金)はリセールバリューという観点からも、物件の資産性に悪影響を及ぼしてしまうことにもなる。

今回は、たまたま高額な計画に疑問を持った住民側が別ルートでの相見積を取得したことで、“実際の工事費”が判明して事なきを得たが、そのまま管理会社が策定した長計に従って計画を進めていたら、必要のない割高な工事費を支払う可能性もあった。

前出の豊田氏によれば、タワマンの大規模修繕は管理会社や設計コンサル会社の主導で事業を行う一般的な進め方では、戸あたりで平均200万円程度になるケースも多く、所有者も「タワマンは高い」という先入観から、再検討をせずに受け入れてしまう実態があるという。

だが、冒頭の事例のように、フェアな相見積もりを実施すれば、本来の適正価格で工事が実施でき、管理会社策定の長計からは大幅にコストダウンできる可能性があるのだ。

「タワマンの大規模修繕は高額」のウソ

豊田氏が続ける。

「タワマンの大規模修繕は、ラウンジやゲストルームなどの共用施設やディスポーザーなど、特有の設備が多いことから高額になるというイメージがあります。しかし、実際には建物の外周を修繕する、いわゆる大規模修繕の工事費においては、それらの共用施設の存在や設備の影響は受けません。

むろん、高層ゆえに『無足場』となりコストが膨らんでしまう部分はありますが、その一方で屋上防水は戸数あたりの施工面積が少なくて済み、内廊下設計であれば内外壁や床の施工面積も少なくなります。そして何よりボリュームディスカウントが期待できるなど、コストが抑えられる部分もあります」

今回のタワマンの事例でも、シーリングの施工単価は一般的なマンションより10~20%程度安くなっているという。

「『タワマンだから高くなる』とは、必ずしも言えないと考えています」(豊田氏)

タワマン、項目別設備更新費・見直し事例、スマート修繕

国交省資料の「平均値」を信じてはいけないワケ

それでも、多くのマンション所有者は「修繕費は高額」と思い込み、不必要なカネを支払ってしまっているケースが多いのが実情だ。特にタワマン工事費の「適正額」は、情報が少なく、把握すること自体が困難なこともある。

そのため、頼ってしまうのが国交省ガイドラインなどが提供する工事費の「平均値データ」だ。しかし、この平均値を目標にする行為自体が実は危ういという。

住宅ジャーナリストがいう。

「タワマンの工事に限らずですが、これらの元データは、管理会社や設計コンサルへの『お任せ』による工事費の集積であるとの見方もできます。

というのも、大規模修繕工事は管理会社や設計コンサルが主導する一般的な進め方では、談合による水増し請求を防ぐことが難しいのが実情だからです。

管理会社による『責任施工方式』では、高額な中間マージンを持っていかれ、設計コンサルタント会社が主導する『設計監理方式』でも、国交省が警鐘を鳴らしているように、キックバックの存在があります。

公募をしたつもりでも、主導する設計コンサル会社によって裏で不正があったり、業者間の手続き業務の際に、管理組合が関知しないところで連絡を取り合って『競合排除』をされたりと、がっつり談合されてしまいます(既報)

大規模修繕工事の適正額は戸あたり120万~130万円

適正額で工事をする上で何といっても重要なことは、大規模修繕工事の「適正費用」を把握しておき、提示された工事費が割高かかどうかの判断基準を持っておくことだ。

国交省の『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査』によると、ボリュームゾーンでは、戸あたりの大規模修繕工事費用は100万〜125万円となっているが、この数字は総工費の25%程度の工事足場の仮設工事費を含んでいない。

これを含む大規模修繕の総工費の平均は150万円程度となるが、複数の大規模修繕工事関係者によると、「費用は物件の形状によっても影響を受けるが、関東の一般的なマンションでは120万~130万円が仮設足場の工事代を含む総工費の相場で、関西ではこの10~20%ほど安くなる」という。

この150万円という国交省データから算出された数字と、実際の工事費の「差額」が管理会社や設計コンサルの中間マージンになっている可能性がある。平均値はあくまで、高すぎる場合に参考にすべき指標で、平均値を目指してしまうと、談合価格を目指してしまうのと一緒かもしれない。

工事費「適正金額」の把握が重要

住宅ジャーナリストがいう。

「まずは自分たちのマンションがいくらで修繕できるのか、その適正金額は、管理組合が管理会社や設計コンサル会社を介さず、独自ルートで工事業者から見積もりを取らないと把握できません。管理会社や設計コンサルタント会社が作る長期修繕計画や、彼らが主導する見積もりは、正味の工事費ではなく、本来、支払う必要がない彼らの利益分も上乗せされているのです。

業者選定と見積もりの取得手続きは面倒でも管理組合が独自でやらないと、それだけでマンション所有者全員が大損することになります」

残念ながら、多くのマンションでは自らが大損していること自体に気付いていないケースが多いのが実情かもしれない。

続く『タワマンの修繕積立金が突如「2.5倍」で住民が悲鳴…!管理会社の怖すぎる“水増し”長期修繕計画「搾取スキーム」』では、長計の闇について、さらに詳しく解説する。

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