金価格の高騰で、不要になった金のアクセサリーなどを貴金属店に持ち込み換金する人が増えている。小売店で販売される金の価格は、10年前の約4倍。東日本大震災以降、「必要なものだけを持っていたい」とタンスの中を整理する人が増えた影響もあるようだ。(村島有紀)
◆必要なものだけ
先物取引を行う東京工業品取引所(東京都中央区)によると、今月6日、金1グラム当たり4749円と過去30年間で最高値を記録した。
貴金属ジュエリーの老舗「GINZA TANAKA銀座本店」(同)では7月以降、連日のように、手持ちのジュエリーを持った主婦や会社員が列をなし、1日約1千件の貴金属が換金されている。
審査に時間がかかるため、待ち時間は4~6時間に及ぶことも。8月からはグループ会社から応援を頼み、接客人数を通常の3倍にしても追いつかない。水木直人・同社マーケティング本部長は「30年以上この業界にいるが、こんな現象は初めて」と驚く。
同店の平成12年の平均小売価格は1グラム当たり1014円。その後、じわじわと上がり、今年7月には月平均4千円を超えた。
換金する人が多いことについて、水木本部長は「『お金に困って』というより、タンスの中を整理したいという人が多い。流行した『断捨離(だんしゃり)』ではないですが、不要なものを持たず、必要なものだけを持ちたいという意識の方が多い」と分析する。
◆換金で旅行に
金の価格は日々変動するにも関わらず、「いくらでもいいから、今日売りたい」という人も多いという。東日本大震災の経験からか、「今できることを先延ばしにしない」という意識も垣間見える。
取材に訪れた日(8月31日)の買い取り価格は1グラム当たり4658円(小売価格は4762円)。東京都豊島区の会社員の女性(63)はコイン付きネックレスを持参し、コイン部分を13万9128円で換金した。「40年も前に買ったもので使わないから。娘にあげようかとも思ったけど、このお金で一緒に旅行に行きます」とすっきりしたように話していた。
同店によると、全国8店舗の8月の売り上げは昨年同月の約1・65倍と好調。今後も金の価格は高値で推移するとみる分析もあり、資産価値の高い金やプラチナを多く使用したデザインのものが人気という。
金の価格が高騰し、ジュエリーの中でも換金性の高いデザインがよく売れている =東京都中央区の「GINZA TANAKA銀座本店」