大和ハウス工業(大阪市北区)は、社員に子供が生まれたら100万円を支給するというユニークな人事制度を設けている。少子化問題を足元から改善していこうという試みだ。
大和ハウスは平成17年度に人事制度を刷新し、その一環として、子供が1人誕生するごとに社員に出産祝い金として100万円を支給する「次世代育成一時金制度」を導入した。
「少子化の歯止めに少しでも貢献したいという思いがあった。生まれてくる子供たちは将来、顧客となるからだ」。高野雅仁・人事部人事厚生グループ長はこう説明する。
初年度には、男性社員に3つ子の赤ちゃんが誕生し、計300万円が支給されたケースもあった。20年度には、双子14組を含む724人の赤ちゃんが生まれたという。生まれてくる赤ちゃんの人数は毎年度600人台で好調に推移。今年度は10月までに395人の子宝に恵まれている。
制度導入に伴い、子供が高校を卒業するまでに月5千円ずつ支給する「家族手当」は廃止された。「月5千円だと、お父さんの酒代に消えてしまうかもしれない。でも、100万円をまとめてもらえば、貯金など有効に活用できる」(高野氏)。実際、大半の社員は貯金に回しているようだ。
子供は産むよりも、育てるほうがはるかに大変。このため、同社は育児支援にも力を入れている。
子供の誕生から5日間の連続休暇が取得できる「ハローパパ休暇」、子供が3歳になるまでに1カ月単位で2回まで休暇が取得できる「育児休業制度」、未就学の子供が病気になった場合などに1年に5日間まで取得できる「子の看護休暇」、各四半期につき1日、本人か家族のための休暇を計画的に義務づける「ホームホリデー」など盛りだくさんだ。
また、持ち家を取得すると、月2万円が支給されるといい、30歳以上の社員の6割近くがマイホームを持っている。19年からは毎年夏、子供たちを職場に迎える「こども参観日」を開催。名刺交換や住宅模型の作製を体験してもらう。
制度の背景には、優秀な人材を逃したくない企業側の思いが強い。高野氏は「住宅メーカーは仕事が厳しい業種で、働く意欲や生活の充実を支援したい」と話す。社員を大事に扱うことで、業績も伸びると信じている。(宇野貴文)