風俗営業法でダンス教室まで規制するのは、的外れと言われても仕方あるまい。実態に即した法改正が必要である。
若者らがダンスを楽しむ「クラブ」を無許可営業したとして、風営法違反に問われた元経営者に、大阪地裁が無罪を言い渡した。「風営法が規制する享楽的なダンスをさせたとは言えない」との判断からだ。
一方、弁護側の「風営法は営業の自由を侵害しており、憲法違反だ」という主張に対して、判決は「規制は公共の利益のために必要で、合憲」と結論づけた。
性風俗の乱れを取り締まる合理性は認めながら、クラブなどの個別の状況に応じて事実認定したのは、適切と言えよう。
風営法の規定で時代にそぐわないのは、ダンスに関するあらゆる営業を「風俗営業」と位置づけ、一律に規制している点だ。
風営法にダンスの営業規制が盛り込まれたのは、戦後間もない1948年の制定時に遡る。当時、ダンスホールが売春の温床となっていたことが背景にある。
客に飲食を提供しないダンスホールやダンス教室を含め、営業には、原則として公安委員会の許可が必要だ。住宅地や学校、病院などの近くでは開業できない。営業時間は原則午前0時までで、18歳未満の立ち入りは禁止される。
ダンスをスポーツや芸術活動として楽しむ人が増えている。高齢者を中心に社交ダンスも流行している。こうした現状を考えれば、ダンスホールやダンス教室への規制は撤廃すべきではないか。
その一方、クラブに対しては、一定の規制を残すべきだろう。大音響で音楽を流すため、騒音や振動の苦情が多い。薬物売買や暴力事件なども発生している。
超党派の国会議員約60人で作る「ダンス文化推進議員連盟」は、風営法改正案を今国会に提出することを目指している。
ダンスホール、ダンス教室の規制は撤廃し、クラブについては、立地規制を維持しつつ、許可を受ければ営業時間を延長できるとする案が有力とされている。
営業の終了時間が早いと客が集まらないとして、あえて無許可営業を続けているクラブは少なくない。改正案は、現実的な対策として検討に値するのではないか。
政府の規制改革会議の部会では、2020年の東京五輪を前に、クラブを観光資源として活用すべきだといった意見も出た。
重要なのは、ダンスを健全に楽しむための環境作りである。