チェキの販売台数、ついにデジカメを逆転へ アジアや欧米で人気が拡大

カメラと言えば、いまやデジタルが当たり前。ところが、あるメーカーではそのフィルムカメラの販売台数がデジカメを越える逆転現象が起きている。そのメーカーとは、コンパクトデジカメで世界シェア5位の中堅メーカー、富士フイルムだ。
2013年のコンパクトデジカメの世界総出荷台数が前年比4割減となるなど、デジカメ市場はスマートフォンの普及に押されて急縮小している。富士フイルムも2013年度のデジカメ販売台数は、コンパクトとミラーレスをあわせて515万台(前期比47%減)だった。
これを受けて、同社はスマホと差別化しにくい低価格帯コンパクトの機種数を大幅に削減。高級コンパクトとミラーレスの高級ブランド「Xシリーズ」に経営資源を集中するデジカメ事業の構造改革を実施している。今2014年度のデジカメの販売台数は220万台の計画で、前期比57%減を見込んでいる。
■今期は300万台の販売計画
デジカメとは対照的に、絶好調なのがインスタントフィルムカメラ「チェキ」だ。販売台数は、2008年度の40万台から2013年度は230万台と急拡大。今2014年度の販売計画は300万台とデジカメの販売台数を上回る。
「チェキ」は、1990年代の発売後にヒットしたものの、2000年代前半にはデジタル化の波に押されて販売が低迷。しかし、2007年に韓国のテレビドラマで小道具として使用され、2010年には中国で女性タレントがSNS上で紹介。これらをきっかけに、アジア圏を中心に再び人気に火がついた。
主な購買層は、フィルムカメラ時代を直接体験していない10代~20代の女性だ。フィルムならではの独特の写真の風合いに加え、撮影した写真がその場でプリントされるなど、デジカメにはない魅力が若い世代に新鮮に受け入れられている。
「チェキ」を統括する富士フイルムの山元正人イメージング事業部長は、「アジア圏から火がついたチェキの人気は、今や欧米市場にも拡がりつつある。機能面でもデザイン面でもまだまだ進化の余地があり、2~3年後には500万台の販売台数を目指している」と今後のさらなる成長に自信を見せる。
■原宿に直営店出店
富士フイルムは、今年2月に原宿にチェキや関連グッズを販売する直営店「ワンダーフォトショップ」を出店するなど、若者層に写真をプリントすることの魅力を伝える活動を始めた。
同じく2月にはスマホで撮影した写真をチェキ用のインスタントフィルムで現像できるポータブルプリンター「スマホdeチェキ」を発売するなど、関連商品の開発も強化している。「スマホdeチェキ」は、7月に自社の高級デジカメ「Xシリーズ」の写真プリントにも対応する。
チェキは、本体だけでなくインスタントフィルムの販売も含めて収益を拡大している。富士フイルムにとっては、スマホの普及でデジカメの販売数量が低迷し、デジカメの採算が悪化する中、そのデジカメに押されて消えかけていたインスタントフィルムカメラが思わぬ救世主となっている。

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