チェルノブイリ 25年後も森のキノコ食べて年間60人が被曝中

ベストセラー『がんばらない』著者の鎌田實氏は、長野県の諏訪中央病院の名誉院長でもある。チェルノブイリの子供たちへの医療支援に取り組んだ経験から、食物によって起きる内部被曝の危険性を語る。
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 福島県産のマツタケが出回る時期である。今年はどうやら豊作のようだが、今年のキノコ類は、かなり厳しい。多くの地域のマツタケが出荷停止になるのではないか。
 政府や東電、原発を推進する学者たちが「大したことはない」「大丈夫だ」と言っている間に、想像を超える汚染が進んでいた。20年以上にわたり、14億円の医療支援を続けて、旧ソ連のチェルノブイリを見てきた僕としては、チェルノブイリほどではないが、思いのほかチェルノブイリに近い汚染だと思っている。
 半減期が8日である放射性ヨウ素はほとんどなくなったのに対し、これから気をつけなければいけないのは、セシウムである。いまでは土壌を除染しよう、家の内外でミニホットスポットを見つけて対処しよう、といった外部被ばくへの意識は高まりつつあるが、内部被ばくは口から入る食物によって起きることを忘れてはならない。
 チェルノブイリ事故で大打撃を受けたベラルーシ共和国のベトカ地区に行ったことがある。人口約4万人の町で、2万5000人が強制避難で退去した。その町の病院には、ホールボディカウンターがあって、それで体内の被ばく線量を測りながら、住民の健康を管理していた。ところが25年経ったいまでも、森の中のキノコ等を食べてお年寄りが新しい体内被ばく者になってしまうのである。
 その数は年間60人ほど。それでも“フェイシャル”という保健師と医師の中間のような専門家が健康管理を続け、安全な食物だけを摂るようにしていくと3か月ほどで被ばく量が正常値化するという。
 このことは、きちんと放射性物質を数字で“見える化”して対処することの大事さを教えている。
※週刊ポスト2011年10月14日号

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