人工知能(AI)に関する政策の司令塔機能を担う「AI戦略会議」の初会合が11日、首相官邸で開かれた。対話型AIサービス「チャットGPT」など生成AI技術の利用が世界中で急速に広がる中で、国としてAIの活用促進や規制のあり方を検討する。 【写真】岸田首相と面会したチャットGPTのCEO 岸田文雄首相は会議で、「AIは経済社会を前向きに変えるポテンシャル(潜在力)とリスクがある。ポテンシャルの最大化とリスク対応に向け幅広い分野で検討作業を進めてほしい」と指示した。今後、民間企業や教育、公的分野での利用促進▽偽情報のまん延や個人情報の侵害などリスクへの対処▽国際的な規制の検討▽国内のAI開発支援――について議論し、政府が6月にもまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」に反映させる。 戦略会議は、これまで技術面を中心にAIの利活用を議論してきた「AI戦略実行会議」を改組。法制度や倫理など、AIを巡る幅広い課題を議論する。議長は松野博一官房長官。座長には、日本のAI研究の第一人者である松尾豊・東京大大学院教授が就任し、民間トップや研究者、弁護士ら有識者8人のほか、内閣府、デジタル庁、総務省、経済産業省などの関係省庁が参加した。 初会合ではチャットGPTを念頭に、有識者から「日本では好意的に受け止められており、健全に使われるようサポートする必要がある」「規制した場合、AIの変化が早く、作ったルールが陳腐化する可能性がある」といった意見のほか、「短期的には海外製を利用するしかないが、中長期的には日本の技術力を高めるべきだ」とAI開発の強化策を求める声もあった。 チャットGPTはインターネット上の大量のデータを学習し、利用者の質問に回答したり画像を作成したりするため、個人情報の無断収集や著作権侵害、偽情報の拡散などが懸念されている。欧州などでは規制を求める動きが強まっているが、日本では普及が遅れていることもあり、与野党問わず積極的な利用を促す声が多い。 岸田首相も会議で「国境を超えたグローバルな課題であり、G7(主要7カ国)議長国として共通理解やルール作りにリーダーシップを発揮することが求められる」と意気込みを表明。AIを巡っては、4月に群馬県高崎市で開いたG7デジタル・技術相会合で、「責任あるAI」の推進に向け国際的な技術基準の策定を目指すことなどを盛り込んだ共同声明を採択した。広島で19日から開くG7首脳会議(サミット)でも議長国として議論の加速を目指す。【古屋敷尚子】