自転車を施錠しないと、警察が鍵をかけます――。相次ぐ自転車盗を防ごうと、その名も「おせっカギ作戦」を香川県警が始めました。高松市の中心街で無施錠の自転車がないか、警察官が抜き打ちでパトロールしています。背景には「自転車県」ゆえの危機感がありました。(朝日新聞高松総局記者・福井万穂)
高松市の繁華街の中心地、ことでん瓦町駅近くの駐輪場。記者が訪れた平日の午前中は、通勤や通学用とみられる自転車が所狭しと並んでいました。
わずかな隙間を探して自転車を止めると、目についたのが白の看板。「鍵をかけていない自転車に、鍵をかけさせていただきます」。この効果もあってか、周囲に無施錠の自転車は見当たりませんでした。
なだらかな道が多く、自転車保有率の高い香川県は「自転車県」です。それだけに、自転車盗の被害もあとを絶ちません。
県警によると、今年把握した自転車盗(8月末現在)は719件。昨年の同時期より18件増えました。人通りの多い駅周辺の駐輪場で特に被害が多く、盗まれた自転車の75%は鍵をかけていませんでした。
自転車盗に特化した対策はこれまでありませんでしたが、地道な声かけだけではなかなか被害が減りません。そこで10月から県警は、「おせっかい」とかけた「おせっカギ作戦」を実施。駐輪場の看板も同時に設置されました。
作戦はこうです。警察官が不定期に高松市中心部の駐輪場8カ所を見回り、鍵のかかっていない自転車を見つけたら、防犯登録シールをもとに持ち主に電話。本人の了解を得たうえでダイヤル式のワイヤロックをかけ、解錠するダイヤル番号を伝えます。鍵はその後も使ってもらえるよう、プレゼントするという仕組みです。
見回りをした警察官は「持ち主にすぐに連絡がつかないこともあり、手間はかかる」としながらも、「確実に防犯につながる」と作戦の手応えを感じています。
一方、通学などで駐輪場を使う市内の女子高校生は「ちょっとやりすぎかな」と苦笑いでした。それでも看板を見て「鍵をかけられたら面倒かも」と思い、施錠するようになったといいます。県警では年末まで続けて効果を検証し、対象の駐輪場を増やすか検討する予定です。
こうした取り組みは、香川県外でも実施されています。宮崎県警では、連絡先を書いた金属錠をかけ、持ち主から連絡があれば警察官が解錠に行く「思いやりロック」作戦を実施。山梨県警では、ダイヤル式の鍵に連絡先を書いた札を取り付け、連絡を受けたら解錠番号を伝えるようにしました。
香川県警では、他県の取り組みを参考にしながらも、「解錠に手間取る時間を減らせるように」と、事前に持ち主に連絡して番号を伝えておく方法を考えたそうです。また東京でも、自転車盗の多い大田区蒲田や足立区などで同様の取り組みが行われています。
取り組みを取材した筆者も、自転車に鍵をかけないことが多く、最近上司に指摘されました。「無施錠って意外と目立つのかも」と気づいて以降は、毎日鍵をかけています。被害を防ぐためにも、ひと手間を惜しまない心がけをしていきたいです。