最近はネットに押され、若者のテレビ離れが進んでいるともいわれていますが、テレビは依然として最大の広告媒体です。2013年のテレビ総広告費は1兆8000億円ほどありますが、ネットは増加しているとはいえまだ9000億円程度です。テレビの世界では視聴率が絶対的な影響力を持っているのですが、視聴率だけでは広告効果を計るための指標としては不十分という意見も聞かれます。そもそもテレビの視聴率とはどのようなものなのでしょうか?
視聴率とは、テレビを所有している世帯のうち何%がその番組を見たのかを示す指標です。一般的に視聴率という言葉が使われるときには、世帯視聴率のことを指しています。これは個人視聴率ではないので、視聴率が10%という時には、国民の10人に1人が見ていると解釈することはできません。あくまで10世帯のうち1世帯が見ているという計算になります。
視聴率の測定は、視聴率調査の専門会社が行っています。基本的には無作為に選ばれたモニター世帯に設置した機器によって、どの時間帯にどの番組を見ているかを自動的に集計します。モニターが設置される世帯は関東地区では約600世帯です。600という少ないサンプル数で正しい評価ができるのかという疑問を持つ人がいるかもしれませんが、統計学的には、算出された視聴率は95%の確率で±数%の範囲に収まっています。サンプル数を4倍にしても、精度は半分程度しか上昇しませんから、コストを考えて、この程度のサンプル数に抑えているわけです。
もっとも数%とはいえ統計上の誤差があるのは事実です。例えば視聴率が10%だった場合には、95%の確率で7.6%から12.4%の範囲に収まっている計算になります。視聴率が10%を超えるかどうかは、テレビマンにとっては運命を左右するほどの問題ですが、実際には7.6%の場合もあれば12.4%の場合もあるわけです。広告を出すクライアントにとっても7%台と12%台ではその意味がまるで違ってきますから、統計的な誤差が持つ意味は軽視できません。さらに、従来の視聴率調査では視聴者の反応が分からない、録画の影響が考慮されない、といった問題も指摘されています。
視聴率調査の専門会社が広告代理店やテレビ局の関係会社であることや、かつてテレビ局がモニター世帯に金品を渡す事件が発生したことなどから、視聴率調査はアテにならないと批判する人もいます。調査会社が1社しかないことや、不正を自律的に防ぐ仕組みが乏しいことなど不備はありますが、広告媒体として見た場合の問題は、やはり統計的誤差が大きい点と、視聴者の反応が分からないという部分が大きいでしょう。
視聴率調査を行っているビデオリサーチ社は昨年、ツイッターと提携し、テレビ番組に対するツイッター上での反応を測定するサービスを開始しました。ネットとテレビは別といわれていますが、実際にネットで話題になっているテーマの多くがテレビ番組を情報源にしています。ネット上での反応を広範囲に解析するサービスが数多く登場してくれば、テレビの広告媒体としての価値が本当はどの程度あるのか、より明確になってくると考えられます。その時、非常に価格が高いといわれるテレビの広告料金は、上がっているのでしょうか?それとも下がっているのでしょうか?
(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)