テレビは他人のふんどしで相撲をとりすぎてはいないか?

バブルの時期を頂点にして、テレビの番組制作費は下がり続けている。その主な理由は、景気の低迷や視聴率の低下にともなうスポンサー料の減収などであろう。特に後者は深刻であり、いまやテレビを持っていない人や持っていても見ない人はかなり多く存在する。
たいがいの情報はネットで得ることができる環境のなか、あえて人々に「テレビを見よう」というモチベーションを持たせることは至難の業である。私たちが「見たい」と思うような番組は、主にしっかりと取材をした上で放映される報道番組やドキュメンタリー、さらにはきっちりと作り込まれたバラエティ番組やドラマなどがあげられる。だが、しっかり取材し、きっちり作り込めば、それなりに制作費がかかってしまう。
無駄な予算を使う必要はないが、私たちが「見たい」と思うような番組にはそれなりの制作費がかかる。このまま制作費の低予算化に歯止めがかからなければ、テレビ局は「番組の質が下がる」「視聴率が下がる」「スポンサーがつかない」「予算が下がる」という負のスパイラルから抜け出すことはできない。
なかには「お願い!ランキング」(テレビ朝日系)のように、予算がなければないなりに工夫をこらした番組もないわけではない。しかし、芸能人をひな壇に座らせ、海外の資料映像を買い付けて垂れ流したり、ネットに出回る動画を垂れ流す、いわば工夫のない番組があまりにも多い。番組の改編期にあたる10月の第一週に放映された各局の特番は、工夫のなさを象徴している。
筆者が愛読する「TV Bros.」(東京ニュース通信社)から、その手の番組を取りあげてみよう。10月2日の「世界ぶっちぎり映像6 秋の超新作大放出SP」(TBS系)、同3日の「世界まる見え!テレビ特捜部 秋の2時間SP」(日本テレビ系)、同4日の「超ド級!世界のありえない映像博覧会8」(フジテレビ系)、同5日の「ザ!世界仰天ニュース キレイになりたい!命懸け大変身ビューティー祭り!」(日本テレビ系)、同8日の「奇跡の笑撃ハプニング 超カワイイ映像とにかく見せますSP!」(TBS系)……。
日テレの番組に関しては、元のネタは独自ではないものの、独自取材や再現シーンの制作など、多少の作り込みは感じられる。その他の番組は、多くの場合、買い付けた動画や無料の動画をそのまま垂れ流し、ひな壇の芸能人が感想やらコメントやらを述べて終了。もはや番組制作で重視されるのは企画力ではなく検索力なのではないか、と思ってしまうほどの工夫のなさである。
そういえば、NHKも日曜の夜に「特ダネ!投稿DO画」なるものを放映している。また、平日の午前に放映されているフジテレビの「知りたがり!」には、その日の5時~9時くらいまでに他局で報じられたネタをそのまま使うコーナーがある。それを言いだしたら、NHKとテレビ東京を除くすべてのキー局が、朝の報道番組で「新聞記事の紹介」を内容の中心に持ってきている。そんなことをやっていたのは、当初、テレ朝の「やじうまテレビ!」くらいだったのに。
制作費が低下しているなか、他人のふんどしで相撲をとることに関しては仕方のないことだとは思う。とはいえ、自助努力がないまま他力本願の番組作りを続け、つまらない番組ばかりを垂れ流していたら、番組制作の負のスパイラルは深刻化する一方となる。くわえて、この負のスパイラルの一因がテレビ局正社員の馬鹿高い給料と番組制作会社スタッフの低賃金という歪んだ関係にある、と筆者は考えているが、その件はまた別の機会に。
(谷川 茂)

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