月額1000円程度で過去のテレビ番組や映画がインターネットで見放題になるサービスが着実にユーザーを広げている。
米国発で今春日本テレビに買収された「Hulu(フールー)」は「昨年は会員が倍増した」(運営会社)といい、NHKオンデマンドも平成25年度決算で初の黒字を確保する見通し。テレビ番組というコンテンツが持つ魅力をネットで発信する場ともなっており、関係者には“テレビ回帰”の呼び水としての期待もあるようだ。(本間英士)
◆独自コンテンツも
Huluは23年8月にサービスを開始。海外ドラマや映画などの動画をスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどで視聴でき、月額は税込み1007円。動画数は開始当初の数千から1万3千に増加した。運営するHJホールディングスによると、日本の会員数は公表していないが、昨年は倍増した。
そのHuluを買収した日テレの於保(おほ)浩之企画部長は、「以前からネットでのコンテンツ配信を考えていた。Huluは対応しているデバイスの数が多く、動画配信のブランドが確立していて理想的だった」と説明する。
日テレは4月からHuluに自社番組の配信を開始。現在放送中のドラマ「花咲舞が黙ってない」も第1話から見返すことができる。於保氏は「放送を見逃した視聴者から、ネット配信を望む声は多い。テレビ局としてもHuluで見てもらうことで、一度は逃した視聴者を再びテレビ視聴に戻すことができるチャンスになる」と語る。
Hulu独自のコンテンツ作りにも意欲を示し、地上波ドラマのスピンオフや、バラエティーの未公開映像の配信など、テレビ局ならではの配信を検討中という。「スマホで動画を見るのは若い人が多い。ネットを通じ、テレビのコンテンツが持つ魅力を、普段あまりテレビを見ない人にも改めて発信できる」と於保氏は力を込める。
◆「あまちゃん」効果
NHKオンデマンドも好調だ。20年12月にサービスを開始したが、権利処理やシステム構築など経費が収入を大きく上回り、慢性的な赤字体質だった。しかし、25年度決算の速報値では、利用者数の増加や権利処理の効率化などにより、開始以来初となる1億3千万円の黒字を確保した。月額972円で放送後2週間、約600番組を見られる「見逃し見放題パック」などを提供している。
NHKオンデマンド室の辻泰明室長は、利用者数の増加について「『あまちゃん』を見たくて入会した方がそのまま会員として定着して他の番組も見るという、追い風効果があった」と話している。
NHK以外の民放各局もオンデマンドサービスを展開し、電通や民放5社が携わる「もっとTV」は民放5社の番組約800話分を「月額見放題パック」(同972円)で提供している。
■アニメ特化や割安サービスも
「定額見放題」サービスには値段設定を低めに抑えたプランや、アニメなどに特化したものもあり、選択肢は多い。
主にスマホ向けの視聴を想定しているのが、NTTドコモの「dビデオ」(月額540円)。音楽プロモーションビデオやドラマ、映画など約2万タイトルが視聴可能だ。ドコモ以外のキャリアユーザーも使えるが、ドコモIDを取得する必要がある。au(KDDI)の「ビデオパス」(同606円)、ソフトバンク「UULA(ウーラ)」(同504円)も同様のサービスを行っている。
アニメに特化したサービスでは、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」の作品群が同378円で提供中。「ハチミツとクローバー」「東のエデン」「のだめカンタービレ」などの人気アニメが見放題となる。また、「バンダイチャンネル」では同1080円で「機動戦士ガンダム」シリーズなど約1万2000話分を配信し、アニメファンの支持を集めている。