テレ朝 視聴者層「年収300万円」の強み

 テレビ界の勢力図が激変している。これまで日本テレビ、フジテレビ、TBSの後塵を拝していたテレビ朝日が大躍進。今年4月からの上半期で1959年の開局以来初めてプライム帯(午後7~11時)で視聴率1位を獲得。年間でフジを抜くのは確実で、首位の日テレにも肉薄している。
 これまで過去30年間、年間視聴率争いはフジと日テレの一騎打ち。「かつてはテレビ東京と一緒くたにされ“フタケタ局(10と12チャンネル)”とヤユされていた」(制作会社幹部)という同局が絶好調の理由は何なのか。
「サッカー中継が当たったとか、『相棒』や『報道ステーション』が安定しているとか、そういうレベルの話ではない」というのは大手広告代理店関係者だ。どういうわけか……。
「これは代理店サイドの分析ですが、日テレとフジの平均的な視聴者層は年収500万円世帯。テレ朝はそれよりも低くて300万円と想定していました。テレ朝が低いのは、かつてはトレンディー路線とは無縁で、時代劇やアニメなど高齢者と子供向け番組ばかりだったからです。ところがこの数年でデフレが一気に進行し、日本全体が不景気に。年収は下がる一方です。結果、憧れやステータス、グルメ、オシャレなどを前面に押し出した番組は数字を落とし、ラーメンや散歩といった身近なテーマを扱った番組が受けている。そうした時代背景とテレ朝の番組構成がうまくマッチしたのです」
 たしかに、テレ朝で好調な番組は、飲食チェーン店の人気メニュー10位以内を当てるまで帰れない「帰れま10」コーナーが人気の「お試しかっ!」や「無人島0円生活」、1カ月1万円生活の「いきなり!黄金伝説。」、「ちい散歩」など。トレンディーとは無縁で、“生活感”を前面に押し出した番組が目立つ。制作費削減ゆえの苦肉の番組作りだった、が功を奏している。
 現在、「1カ月1万円生活」に出演中の経済評論家・森永卓郎氏はこういう。
「『1万円生活』は光熱費を引くと1日あたり2、300円で生活しないといけませんが、まあ、なんとかなるもの。周囲の評判は上々です。僕は03年に『年収300万円時代を生き抜く経済学』という本を書きましたが、今はそれすら隔世の感があるほど不景気が進んでいる。時代の空気がテレ朝に追いついたのでしょう」
 躍進の陰にデフレ不況あり。喜ぶべきか悲しむべきか……。

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