日々忙しいビジネスマン&ウーマンに代わり、世に溢れるメディアの中から、知れば“絶対に”人に話したくなる報道や記事を紹介。日常でなんとなく耳にするあのニュース・情報の裏側や、テレビなどでは報じられないタブーに迫ります。
お笑いコンビ・ナインティナインの矢部浩之が、かねてより交際中の元TBSアナウンサーで現在フリーの青木裕子と結婚しました。4月6日18時30~放送のフジテレビの番組『めちゃ×2 祝ってるッ! 矢部浩之・裕子 結婚披露宴 緊急生放送スペシャル!!』で、ふたりの結婚披露宴が番組企画として放送されました。また、矢部が結婚報告をしたのも、同局が立ち上げたインターネット配信限定テレビ局・ゼロテレビの番組『めちゃ×2 ユルんでるッ!』でした。
「使えるモノはなんでも使え」という同局の“ガツガツさ”が感じられますが、それもそのはず、かつては視聴率三冠王だった同局が、ここのところの低迷気味で大変な事態になってます。これまで、視聴率王を争ってた日本テレビも同様に低迷する中、その隙を突いて躍進したのが、テレビ朝日。ゴールデンタイム(午後7~10時)とプライムタイム(午後7~11時)の両時間帯で、2012年度平均視聴率が1位となり二冠を獲得するなど、テレビ業界ではまさに下克上が起こっています。
ちなみに、フジテレビは、これまではライバル視すらしていなかったテレビ東京にも追い上げられ、曜日時間帯によっては負けることもしばしば。
なぜ、かつての王者がこんなことになってしまったのか?
いくつかの視点で、分析してみたと思います。
まずは、フジテレビが苦戦している理由です。昨年末のフジテレビ大みそか特番を見てみましょう。昨年秋、鳴り物入りで始まった『料理の鉄人』(1993~99年放送)のリメイク番組『アイアンシェフ』の特番が放送されました。ちなみにレギュラー放送のほうは、主宰に俳優・玉木宏を迎えてリニューアルを図ったつもりが、わずか5カ月、3月で打ち切りとなりました。
その大みそか特番ですが、結果は他局に惨敗。勝負は始まる前から決まってた感じで、不戦敗に近いものでした。さらに、山口智子の16年振りの主演復活を目玉にしたドラマ『ゴーイングマイホーム』も苦戦。今秋には、いわゆるW浅野(浅野温子、浅野ゆう子)のドラマが企画されているらしいですが、そもそも「W浅野って何?」と思う方のほうが多い昨今、ほとんどの視聴者にとって初見となるわけですから、サプライズ感に乏しいと言わざるを得ません。
ここまで見てきてもわかりますが、フジテレビは、なぜここまで過去の栄光(遺産)にしがみつくのでしょうか?
その理由は人事にあると思います。視聴率低迷に喘ぐフジテレビは、昨年『東京ラブストーリー』(91年放送)など数々のトレンディードラマを手がけたエースプロデューサーの大多亮氏を常務取締役に昇格し、抜本的な立て直しを図りましたが、結果が出ず、結局過去の遺産を使っただけで、視聴者には響かなかったという格好になってしまいました。
●ヒット番組量産システムを生み出したテレビ朝日
では、何をやってもうまくいかないフジテレビに対して、絶好調のテレビ朝日は、なぜここまで躍進できたのでしょうか?
まず、番組のつくり方が絶妙。深夜番組でパイロット放送(テスト放送)をこっそりやってみて、評判がよければ少しキャストを豪華にしてやってみる。さらに評判よければ今度は早い時間帯に上げるわけですが、ここがテレビ朝日のうまいところで、ほとんどの局はいきなりゴールデンタイムに上げてしまって失敗する。そもそも、深夜放送で面白い番組は低予算で制作されていて、場合によってはスポンサーが付いていないこともしばしば。予算がないため、その分アイデアをがんばって絞り出すわけですが、その際に、結構キワどいこともやってみる。スポンサーがいないので、結構なことがやれるわけです。
そんな、キワどい内容のおかげで面白い番組を、テレビ局は即ゴールデンタイムに上げようとする。しかし、大スポンサーが付いてるため、キワどい企画はできず、かなりマイルドなテイストに修正する。すると、番組が面白くなくなってしまう。
これに気が付いたのがテレビ朝日です。テレビ朝日は、深夜で面白かった番組は、ちょっと上の23時台に上げます。すると、視聴者は大幅に増えるのに、番組のテイストは変えずに済む。そして、ゴールデンタイムには、番組単位で上げるのではなく、使える企画だけ上げて番組自体は深夜枠に残すシステムを構築しました。これが、テレビ朝日のヒット番組量産システムです。
それが可能だった理由は、『ニュースステーション』などを手掛け、09年6月にテレビ朝日初の生え抜き社長に就任した早河洋社長の存在が大きいと言われています。さらには、『ロンドンハーツ』『アメトーーク!』などのヒット番組を多く手がけている加地倫三ゼネラルプロデューサーの存在が大きいと思います。加地氏の著書『たくらむ技術』(新潮新書)を読むと、いかに戦略的に番組づくりをやっているかがよく理解できます。
人材的な話では、キー局の視聴率競争では最下位が続いていたテレビ東京にも敏腕プロデューサーが存在します。伊藤隆行プロデューサー(通称、伊藤P)が手がける『モヤモヤさまぁ~ず2』は、深夜番組から日曜19時に上がり、いまやテレビ東京の看板番組となり、さまぁ~ずと共に番組MCだった(3月末で交代)大江麻理子アナウンサーは、「好きな女子アナランキング」で不動の1位を誇っていたフジテレビの加藤綾子を抜き去り、ついに1位の座を獲得しました。
ちなみに、最近テレビ各局で流行っているブラブラ散歩系番組は、この『モヤモヤさまぁ~ず2』か『ちい散歩』(テレビ朝日系)がルーツで、番組フォーマットも真似されていますが、それぐらい面白い番組だと言えます
●過去に頼るフジテレビgoogletag.cmd.push(function() { googletag.display(‘div-gpt-ad-1360059411405-0’); });
そう考えると、フジテレビは古い人を起用して、古い番組フォーマットに頼るなど、新しいことへの挑戦を放棄してるようにしか見えません。しかし、フジテレビにもいい番組はちゃんと存在しており、例えば3月に最終回を迎えたドラマ『最高の離婚』(1~3月放送)などは久々にヒットした連続ドラマですし、毎週金曜日23時から放送されてる『テラスハウス』は、よく『あいのり』(1999~09年放送/フジテレビ)風な番組と紹介されたりされますが、まったく違っていて、このご時世にほとんどテロップの入らない映像づくりは、こだわり抜けれていて斬新です。何より、かなりの手間暇がかかってることが読み取れます。
ほかにも、面白い番組は結構あるのですが、なかなか視聴率につながらない。それには、ひとつの理由があると言われています。
それは、放送電波がデジタル化された際に、フジテレビは「8」チャンネルにこだわりました。一方、テレビ朝日はアナログ時代の「10」をあっさり捨て去り、「5」に乗り換えました。それにより何が起こったかというと、新聞のテレビ・ラジオ欄の位置が、テレビ朝日が中央に、フジテレビは右端に移動することになりました。この影響は大きいと、業界ではまことしやかに囁かれています。
視聴者からしてみれば、数字(視聴率)にこだわらず面白い番組をつくってほしいと思うわけですが、そうは簡単な話ではない、複雑な事情がテレビ業界にはあるようです。
(文=アラキコウジ/ネタックス)
●アラキコウジ:
人力情報キュレーションサービス『ネタックス』を主宰。さまざまなメディア情報の中から、本当に使える情報をピックアップする、忙しい現代人のための時間短縮ツール。情報を単にクリッピングするだけではなく、大量のメディアを横断的に見ることで持ち得た独自の視点によって、よりわかりやすく面白く解説された“ネタ”として配信されるのが特徴。ビジネスマンのマストツールになるべく、日々鋭意運用中ですが、使える情報源の宿命でもある「人に教えたくない」スパイラルにはまっており、解約者がほとんど出ない割に、利用者がなかなか増えないことが目下の悩みのタネ。夢は、ネタックスの利用料だけで生きていくこと。