テレビ朝日系の看板報道番組「報道ステーション」の“派遣切り騒動”に、メディア業界が大注目している。同局が昨年末、同番組の社外スタッフ約10人に「人心一新のため契約終了」を通知。これに日本民間放送労働組合連合会(民放労連)や、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が「派遣切りの撤回を求める」と猛反発。背景には昨年8月に起きた、男性チーフプロデューサーによる女子アナへのセクハラ告発に対する同局上層部の“報復説”がささやかれている。
「報ステ」の“派遣切り”とも思える社外スタッフへの一方的な契約終了通知が発覚したのは、昨年12月26日だった。同日付で民放労連の中央執行委員長名で「テレビ朝日『報道ステーション』スタッフ『派遣切り』の撤回を求める」との談話が発表されたからだ。
テレ朝としては、今年4月の番組リニューアルに向け「人心一新」を図るため、番組スタッフ歴10年前後の社外スタッフ約10人に、契約終了を言い渡したという。
同談話では「番組が継続するにもかかわらず、スタッフの雇用不安を引き起こすような人員の入れ替えを行うことは、社会に一定の影響力を持つメディア企業としてあってはならない」とテレ朝に厳しい目を向けた。
さらに「通告されたスタッフの中には、ショックで体調を崩した人も現れたという」とも明かした。
また10日には、民放労連や新聞労連などでつくるMICも「スタッフ契約打ち切りによる番組解体を許さない」としてテレ朝に契約終了の撤回を求める声明を発表した。
声明によると、通告されたこのスタッフは、ニュース担当のディレクターで「中東情勢や沖縄の基地問題、原発、災害、事件報道などに精通したメンバー」だった。
まさに名物番組に激震が走っているが、そもそも「人心一新」をしなければならない内部事情があったとささやかれている。
昨年8月、40代の社員チーフプロデューサー(CP)A氏が、女子アナを含む女性スタッフ10人以上に、セクハラを繰り返していたことが判明。本紙既報通り、A氏は一昨年9月、同番組サブキャスターだった小川彩佳アナウンサー(34)を番組から追放。結果的に、TBS系のライバル番組「NEWS23」に転身した騒動のきっかけとなった人物だった。
「A氏は、安倍政権批判を嫌う早河洋会長の意向で就任した“子飼いのCP”と言われていました。大きな仕事としては一昨年9月、小川を降板させ、会長のお気に入りだった徳永有美をメインに据えたことくらい。セクハラでA氏はBS朝日に異動になりました」とはテレ朝関係者。
このセクハラ騒動は今回のMICの声明でも触れられている。
「雇用契約上、立場の弱い社外スタッフに対する(A氏の)ハラスメントもありました。そうした問題が起きた後に、テレビ朝日が取るべき対応は、加害者を厳罰に処したうえで、スタッフたちをしっかり守ることです。人心一新といって社外スタッフの入れ替えが強行されれば『声を上げると不利益を被る』という誤ったメッセージとなりかねません」
今回の契約打ち切りを通告されたスタッフには、A氏のセクハラを告発した関係者が含まれることを示唆しているのだ。
テレ朝関係者は「早河会長ら上層部としては、A氏が番組を外れ、コントロールができなくなった。今回の派遣切りはセクハラ騒動のいわば報復とも言われている。局としては好調のドラマに続いて看板の報ステの視聴率も盤石にしたい。そのためにも人事異動は仕方ないが、一度に10人をクビにするのはやりすぎだったのでは」とも話す。
視聴率といえばテレ朝は昨年、年間では日本テレビに6年連続3冠王を許したが、12月だけは6年半ぶりに月間3冠を達成し、年度ごとの3冠王へ勢いづいている。
当のテレ朝は「あくまでも番組リニューアルに伴う措置で、派遣切りや雇い止めなどの指摘は当たらない」と真っ向から否定し、契約終了は撤回しない構えだ。関連労組との攻防が、しばらく世の中を騒がせそうだ。