テレ朝 “歪曲放送”にみる「テレビマンに欠けているもの」 元テレ朝プロデューサーが警鐘

テレビ朝日『グッド!モーニング』で、取材を受けた医師、澁谷泰介さんがインタビューが真意とは異なる編集をされたと訴えた問題。ここにはテレビメディアが抱える根深い問題が潜む。元テレ朝プロデューサーで上智大学文学部新聞学科非常勤講師、鎮目博道氏が警鐘を鳴らす。

 『グッド!モーニング』は12日、この問題について再び放送した。

 まず坪井直樹アナが「澁谷医師のコメントを放送した際に、別の学者の主張を同じVTRで伝えたことで結果的に澁谷医師もPCR検査をただちに増やすべきだという主張をしている印象となった」と経緯を説明。その後、澁谷さんのインタビューを再編集して流し、改めて坪井アナがスタジオで謝罪した。

 「結果的に」という言葉が若干気になったが、およそ3分間、実質的には訂正放送に近い内容だったのではないか。きちんと対応をしたとは思うが、問われるのは今後の番組制作の姿勢だ。

 テレビでコメントをする機会が多い有識者から「テレビの人は自分が聞きたいことを答えてほしいというオーラを強く出してくる」「どうせ都合の良いところだけ切り取られて使われる」という不満をよく聞く。特に医療関係者はテレビへの不信感が強いという。

 僕自身もテレビ局を辞めてから新聞や雑誌の取材を受ける機会が増えたが、正直テレビより新聞や雑誌のほうがずっと取材の仕方はしっかりしているな、と肌で感じる。

 「テレビマンに欠けているものは何だろう」と、このところずっと考えていて、思い当たったことを書きたい。

 もっと現場のディレクターや記者は、カメラを回す前に取材対象者ときちんと話をするべきだ。そして、どのように編集するかをあらかじめ相談して、大まかな同意を得るようにしたほうがいいと思う。番組には時間の制約があるが、短いVTRでも「その人が本当に伝えたいこと」をできるだけ伝えるようにしなければならないと、常に肝に銘じてほしい。自分が現場で見てきたことと違う内容のVTRを作れと上から言われたら、難しいかもしれないが絶対に拒否してほしい。

 プロデューサーやチーフディレクター、ニュースデスクは「自分は分かっていない」と思いながら仕事をしてほしい。テレビは常に新しい問題を扱うから、「きっとこういうことだろう」と問題を一応理解しないと構成は決められない。

 しかしいったん理解したあと、否定材料を探してほしい。自分の理解とは違う意見も紹介しよう。できるだけたくさんの意見を放送しよう。現場に行ったディレクターの話をよく聞こう。結論なんて出さなくていい。実はテレビに結論なんて初めから誰も求めていない、と考える謙虚さが、こういう問題を起こさない一番の方策なのではないかと僕は思っている。

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