新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府の大規模イベント自粛要請や北海道の「緊急事態宣言」が出されてから、29日は初めての週末となった。知事が外出を控えるよう呼びかけた北海道では、札幌の繁華街や函館の観光名所などが閑散とした。各地でテーマパークが休園したり、イベントが無観客で開催されたりして、街から歓声が消えた。
千葉県浦安市のテーマパーク「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」は3月15日まで臨時休園する。この日は従業員が朝から最寄り駅の前に立ち、ハンドマイクを使って人々に休園を伝えていた。夫婦で訪れたマレーシア国籍の男性(49)は「休園は知らなかった。日本の感染の深刻さがわかった」と話した。
同じく15日まで休園する大阪市の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)でも、看板などで状況を説明した。岡山市の30歳代の女性は「昨日に続き今日も遊ぶ予定だったので残念」と帰宅の途に就いた。
プロ野球のオープン戦は無観客で行われ、福岡市のペイペイドーム(ヤフオクドームから改称)では午後1時、福岡ソフトバンクホークス―阪神タイガース戦が静かに始まった。ソフトバンクの工藤公康監督は「ファンがいない試合は寂しいが、仕方ない」と語った。
中央競馬も無観客となり、千葉県船橋市の中山競馬場は、馬が地面を蹴る音が聞こえるほどの静けさ。田辺裕信騎手(36)は「いつもと違う光景で慣れない」と話し、事態の収束を願った。
カニやサケ、イクラなど新鮮な海産物が並ぶ函館市の朝市。いつもは飛び交う威勢の良い客引きの声はこの日、消えていた。「本当に静かで、まるで別の場所みたい」。土産物店の女性(70)がつぶやいた。
感染が広がるにつれ、朝市から中国人ら外国人観光客は姿を消した。日本人観光客に望みをつないでいたところに出たのが外出自粛要請だった。海産物店で働く男性(73)は「客はいつもの1、2割。これが1週間も続けば赤字は避けられない」と漏らした。
異国情緒漂う赤レンガの街並みで人気の「金森赤レンガ倉庫」も人はまばら。道内を1人で旅する兵庫県の大学2年の男子学生(20)は「あまりに人がいない……」と驚いた。
JR北海道と札幌市営地下鉄は通常通り運行したが、札幌市中心部の駅や街に人はまばら。普段は観光客でにぎわう狸小路(たぬきこうじ)商店街は、一部の店が臨時休業した。