日本は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の韓国と、どう付き合ったらいいのか。結論を先に言えば、言うべきことを言ったうえで放置する。いずれ、文政権は自己崩壊するだろう。そのときまで、韓国とは「しばらくお休み」だ。
いわゆる「元徴用工問題」で、韓国外務省の報道官は23日、「日本企業が韓国最高裁の判決を履行すれば、何の問題もない」と発言した。つまり、「日本企業は判決に従って賠償金を支払え」と言っているのだ。
これに対し、河野太郎外相は直ちに康京和(カン・ギョンファ)外相に「事の重大性を理解していない。大変な発言だ。こうしたことが日韓関係を悪くしている」と抗議した。だが、康氏は「日韓の難しい問題が解決することを期待する」と、人ごとのように受け流しただけだった。
そもそも、元徴用工問題とは何か。話は1960年代の国交正常化交渉にまで遡(さかのぼ)る。当時、日本側は事前協議で「個人に補償金を支払ってもいい」という考えを示した。ところが、韓国側は「個人は国内で措置する。私たちの手で支給する」と拒否した。
それで、日本は65年の日韓基本条約の締結と同時に結んだ日韓請求権・経済協力協定で、有償無償合わせて5億ドルを韓国に支払った。
そんな交渉経緯を踏まえて、韓国の公文書には「無償の3億ドルには個人への補償分も含まれている」との考え方が記されている。
ところが、韓国政府は長く協定の存在自体を国民に伏せ、個人への補償もしなかった。それが韓国での裁判過程で明らかになり、紆余(うよ)曲折を経て現在に至っている。
しかも、日韓請求権協定は「両国および国民の間の請求権に関する問題が…完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と明記している。
従って、本来、だれが個人補償すべきかと言えば、韓国政府だ。自分たちが隠してきた事実が明るみに出て、「もう一度払え」と日本に要求し、それを最高裁までが認めるとは、つくづく韓国のデタラメにあきれてしまう。2重取り要求ではないか。
慰安婦問題では、日韓政府が合意して作った「和解・癒やし財団」を文政権は勝手に解散してしまった。海上自衛隊哨戒機に対するレーダー照射事件でも照射の事実を否定し、開き直ったままだ。
こんな韓国と、普通の外交関係を維持するのが難しいのは、だれが見ても当然だろう。
安倍晋三政権は、「元徴用工問題」で請求権協定に基づく第三国委員を交えた仲裁委員会の設置を求めているが、韓国は「検討中」というのみだ。どうぞ、いつまでも検討していただいて結構である。
その代わり、まともな返事があるまで日本は事実上、外交関係を凍結せざるを得ない。もちろん、日韓首脳会談もない。6月には大阪で開かれるG20(主要20カ国・地域)首脳会議で文大統領も来日する見通しだ。文氏が「日本に来たい」と思うなら、来ればいい。
だが、安倍首相が文氏と個別会談する必要はない。いまは「意図した無視」こそが最良の外交政策である。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。