デモや署名の世界に、新しい波がうねっている。ハチマキ姿にシュプレヒコールの前時代的な雰囲気かと思いきや、文化祭やイベントのような楽しげなものまで登場! 2011年は世界各地でデモが起こったが、これで社会は本当に変わるのだろうか? 高円寺原発デモ(4月)などを仕掛けた「素人の乱」の松本哉氏に聞いた。
◆デモで世の中はそんなに変わらない。けど、何かしらの影響は絶対ある!!
反格差、TPP参加反対、毛皮反対、くたばれ就活など、反原発に限らずさまざまなデモが盛り上がっている。以前より身近になりつつあるデモだが果たしてその効力は?
「デモは特別なことではなく、言いたいことを言うための“日常行為”」だと言うのは、大学時代から数々のデモ主宰経験を持つ松本哉氏だ。
「日本人は“自分が言っても世の中変わらない”って考えが染み付いてて、あんまり主張したがらない。典型的なのは原発問題。例えば上司も同僚も反原発と思っていても、会社ではそんな話はしない。その間を埋めるのがデモなんです。デモやっても世の中そうそう変わらないけど、影響力はある。政治家は意外とデモを気にしているものなんです」
実は松本氏はニューヨークの反格差デモから帰ってきたばかり。
「デモは毎日あるけど、全員がやるわけではなかった。いろんな主張の人がいるので、完全に寄せ集め(笑)。格差には反対なんだけど、背景はみんな別々で。民族のことを訴えるネイティブアメリカン、カダフィが死んで喜んでる人、共産党はひどいと言う中国人……めちゃくちゃでおもしろいんだけど、“結局金持ちが悪いんだろ”ってとこでは一致してる(笑)」
◆デモは選挙の投票と一緒意思表示の手段のひとつ
そもそもアメリカでは、デモは至って身近な行為。「デモは選挙に行くみたいなもので、政治参加のひとつの手段」なのだとか。「確かに選挙とすごい似てると思う。自分の一票で変えられるわけではないけど、意思表示はしておきたいよね」と力説する松本氏。
そう、日本においても、デモは「集会と表現の自由」を掲げた憲法21条で保障された民主主義の基本的権利。もっと気軽に、“日常行為”としてやっちゃうべきなのかも。では松本さん、そんなデモ初心者にアドバイスを!
「何か世の中に言いたいことがある人は一刻も早くデモをやったほうがいい。こういうのは迷っちゃだめで、タイミングが大事なんです。あのとき言えばよかったって後悔しないためにも。とはいえ、無理しないのが一番大事ですね。デモは普段やってることを堂々とやっていい場所だから、堂々とやっていいんです。音楽やってる人は楽器持っていったり、ダンサーは踊ったり。いかにデモで自分なりに楽しむか、日常生活をデモにどれだけ近づけるか。無理してハチマキ締めようと思わなくていい。そんな人いませんから(笑)」
【松本 哉氏】
リサイクルショップ「素人の乱」5号店店主。「おれの自転車を返せデモ」などニッチなものから2万人規模の「原発やめろデモ」まで幅広く展開