データ転用・独自解釈・書き換え…5社に広がった型式不正、揺らぐ自動車業界の信頼

ダイハツ工業や豊田自動織機などで発生した自動車の量産に必要な「型式指定」に関する不正問題は、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの自動車・二輪車メーカー計5社に広がった。各社は対象車両の安全性に問題はないとしているが、相次ぐ不正の発覚は、業界の信頼性を損なう事態になりかねない。

 ■トヨタ

 トヨタは2014年以降、計7車種で、型式指定を取得するため国の基準と異なる方法で認証試験を行っていた。対象は「カローラフィールダー」「カローラアクシオ」「ヤリスクロス」の生産中の3車種と、生産を終了した「クラウン」「アイシス」「シエンタ」「レクサスRX」の4車種で、影響出荷台数は計約170万台に上る。

SafeFrame Container

 トヨタによると、認証試験の不正は六つの方法で行われた。フィールダーとアクシオでは、歩行者と衝突する角度を法令よりも厳しく設定して実施した社内試験データを認証試験に転用していたほか、ヤリスクロスでは、積み荷試験を巡る法規変更を反映せず、古い基準で試験していた。

 3日に東京都内で記者会見した豊田章男会長は、不正の理由について「一つではない」と説明。トヨタは年末に向け、業務の見直しを進めるとしている。

 ■マツダ

 マツダは、生産中の「ロードスターRF」「マツダ2」の2車種を含む5車種の衝突試験やエンジン試験で不正があった。累計生産台数は計約15万台としている。

 生産中の2車種では18年と21年に、エンジンの制御ソフトを書き換える不正を行っていた。室内で行う試験では空気が滞留して実際には起こらないような高温状態になるため、試験をクリアするためにソフトを書き換えたという。

 生産が終了している3車種については14〜18年、エアバッグの試験で電子制御での作動が必要なエアバッグをタイマーで作動させていた。

 担当者らは「精緻せいちに試験するため(試験のルールを)独自解釈してしまった」と説明しているという。

 ■ホンダ

 ホンダは07〜22年に生産していた「フィット」「N―BOX」など22車種で、騒音試験やエンジンの出力試験で不正が見つかった。対象車種の販売台数は約325万台だった。

 騒音試験では、法規よりも厳しい条件の重量で走行時の騒音を測る実験を行ったにもかかわらず、規定内の重量で行ったデータとして成績書に記載。エンジンの出力試験では、カタログに掲載される数値に近づけるため、試験で測定されたデータを人為的に書き換えるなどしていた。

 このほか、スズキは過去に生産していた軽自動車「アルト」の貨物仕様のブレーキ試験で、停止距離を書き換えていた。ヤマハ発動機は、生産中の1車種と生産を終了した2車種の二輪車計3車種の認証試験で不正があった。

5社が発表した不正が行われた車種は以下の通り

■トヨタ自動車

【生産中】

▽カローラアクシオ▽カローラフィールダー▽ヤリスクロス

【生産終了】

▽クラウン▽アイシス▽シエンタ▽レクサスRX

■ホンダ

【生産終了】

▽インスパイア▽フィット▽CR―Z▽アクティ▽バモス▽ステップワゴン▽レジェンド▽アコード▽フィットシャトル▽インサイトエクスクルーシブ▽CR―V▽フリード▽N―BOX▽N―ONE▽オデッセイ▽N―WGN▽ヴェゼル▽グレイス▽S660▽シャトル▽NSX▽ジェイド

■マツダ

【生産中】

▽ロードスターRF▽マツダ2

【生産終了】

▽アテンザ▽アクセラ▽マツダ6

■スズキ

【生産終了】

▽アルト

■ヤマハ発動機

【生産中】

▽YZF―R1

【生産終了】

▽YZF―R3▽TMAX

※いずれも型式や生産期間などにより該当しない場合がある

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