トイレ足りず住宅業界悲鳴 中国製部品の供給停滞

新型コロナウイルスの感染拡大が住宅の新築やリフォームに思わぬ影響を及ぼし、工事を終われないケースが相次いでいる。中国からの部品供給の停滞で、トイレやシステムキッチンの納入が遅れているためだ。国は住宅メーカーが施工費用を受け取れるよう、一部の設備が未設置のままでも施主に引き渡せる支援策を発表したが、専門家は「トイレがない家を顧客に引き渡すのは事実上難しい」と指摘する。

 住宅設備機器大手TOTOでは2月中旬から、新型コロナで中国の供給会社の生産が滞り、洗面化粧台や温水洗浄便座の納入に遅れが発生。4月に入っても便座を中心に遅れが続く。クリナップ(東京)でも、IHクッキングヒーターや電気オーブンレンジで同様の状況が生じているという。

 大手メーカーと取引する三木市の老舗住宅メーカー「秋山住研」では現在、工事がほぼ完了した数軒の住宅でトイレや台所がそろわず、引き渡しできない状態が続く。担当者は「直前でもいいから、何とか間に合ってほしい」と願う。

 住宅や事務所の改装などを請け負う「大匠」(神戸市兵庫区)も3月に入り、トイレや台所の納入を見込めず、注文を受けられない状況が続く。同社は「感染拡大で消費意欲が鈍り、既に決まっていたその他の注文もキャンセルが出ている」とダブルパンチを嘆く。

 建設費用の支払いを受けられない住宅メーカーが倒産するのを防ぐため、国土交通省は2月末に支援策を発表。トイレやキッチンが未設置でも、建築基準法に基づく検査を受けた上で、施主に引き渡せるようになった。

 だが、不動産コンサルティング「さくら事務所」(東京)の住宅診断士、田村啓さんは「トイレなしで引き渡すのは現実的ではなく、実際には代替品を設置したり、資金繰りの悪化を承知で引き渡しを延期したりする業者が多い」という。

 田村さんは「一部の設備なしで引き渡す場合は、きちんと施主と住宅メーカーが話し合い、書面に残すことでトラブルを避けられる」と強調する。同事務所では施主向けに5項目のチェックシートをホームページで公開している。(伊田雄馬)

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