トヨタ、空洞化歯止め試金石 国内生産維持へ新工場稼働

トヨタ自動車が国内生産態勢の改革を本格的に始動させた。6日には宮城県大衡村でグループの車両組立新工場を稼働。今後はこの新工場を中心として東北を中部、九州に続く「国内第3の生産拠点」に再編する。円高や国内市場の縮小などで国内メーカーには逆風が吹いており、トヨタの改革の成否は国内製造業の空洞化に歯止めをかけられるかどうかの試金石ともなりそうだ。
 「やっとここまで来た。世界のお客さまに、東北から良い品質の車を提供したい」。トヨタ子会社、セントラル自動車の白井安良副社長は同日、新工場にかける思いをこう語った。
 新工場は、相模原市にあるセントラル自動車(従業員数約1500人)の本社工場老朽化に伴い建設。年産能力は最大12万台で、北米やアジアなど海外輸出向けの小型車「ヤリスセダン(日本名・ベルタ)」を製造する。相模原工場は3月に運転を終了。4月以降は生産を全面的に宮城工場に移管し、本社も移す。
 トヨタは九州でSUV(スポーツ用多目的車)や大型車の生産を集約。今後は同じく子会社の関東自動車工業の岩手工場(岩手県金ケ崎町)と合わせ、東北で小型車を中心に年間50万台の生産を目指す。地域ごとに同種の車両生産を手掛けることで生産の効率化を図りたい考えだ。
 新工場には設備を簡素にした組立ラインや塗装ラインを導入。これにより設備投資を従来と比べ約4割圧縮した。新工場以外の国内生産拠点でも改装時などに同様のラインを取り入れてコストの低減につなげる方針だ。
 トヨタがこうした改革に取り組む背景には、国内生産で採算が十分とれる態勢を築かなければ生産拠点の維持は難しいという判断がある。トヨタは国内の雇用維持や系列メーカーとの関係を重視し、国内生産320万台態勢の堅守を掲げているが、円高で輸出採算は悪化し、人口減などで国内販売の先細りが避けられそうにないためだ。
 日産自動車が主力小型車「マーチ」の生産をタイなど新興国に全面移管するなど、ライバル各社は生産の海外シフトを加速している。日産、ホンダの海外生産比率が7割を上回るのに対し、トヨタは4割台と国内生産の比重が高い。トヨタは国内製造業を代表するだけに、国内生産の危機をどう乗り切るかは国内産業の先行きにも影響する。

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