トヨタが小型スポーツ車「ハチロク」を発表

【静岡県小山】トヨタ自動車は27日、小型スポーツ車を発表した。同社ブランドにスポーティーさを加味するとともに、過去3年間での一連の問題で打撃を受けたイメージの回復を狙う。
 同車は富士重工業のスバルと共同開発された後輪駆動方式(FR)車で、来年春に日本と米国で発売される。日本での車名は「86(はちろく)」だが、米国での名前は明らかにされていない。「86」の名前は、1980年代の「カローラレビン」と「スプリンタートレノ」に由来するもので、両車はいずれもプロジェクト名「AE86」として知られていた。
 トヨタは昨年、高級スポーツ車「レクサスLFA」を発売している。今回の「86」は、同社ラインナップにパフォーマンスの要素を取り戻したいとの豊田章男社長の希望を反映したもの。同社は最近までスポーツ車の製造をやめていた。
 同社長は静岡県小山町の富士スピードウェイで「86」に試乗したあと記者団に、これでトヨタのスポーツ車の血統が続くことになる」とし、「86にはワクワク感、ドキドキ感がある」と語った。
 2009、10年の一連のリコール(回収・無償修理)や、日本の大震災とタイでの洪水による生産の遅れで市場シェアが打撃を受けたトヨタは、この新型車でショールームへの客足を取り戻したい考えだ。同社は、富士重の技術を利用した水平対向型2000ccのエンジンと6段変速ギアを搭載した「86」について、値段や燃費、販売予想などの主要な詳細は明らかにしていない。しかし、同社関係者は、値段を気にする消費者のマスマーケットにアピールするような価格になると述べている。
 チーフエンジニアの多田哲哉氏は記者団とのインタビューで、「これはニッチな製品として設計されたものではない」と述べるとともに、「前身の車は大学を出たばかりの勤労者に魅力があるような価格で30年前に販売された車だ。新型車でもこれを踏襲したい」と話した。
 対ドルで過去最高水準の円高になっている日本から輸出するため、これは同社にとって大きな挑戦になるかもしれない。日本で作られる製品は、海外では円高で価格競争力が低下するからだ。
 トヨタの「86」と、同じ車で別名のスバル車は国内の富士重の工場で製造され、ここから欧米に輸出される。
 多田氏は、コスト削減ためによく採用される標準化された部品はあまり使わず、一方で、現在のほとんどの車に使われているよりも古い技術を用い、電子部品を少なくするなどして別の面での節約をしていると述べた。ただし、こうした方針をとった本来の目的は、運転者のコントロール感覚を改善し、部品によるカスタマイズを容易にするためであるという。オリジナルのAE86はこれが人気となり、今でも多くのファンがいる。
 同氏は、最先端の技術を使わないということは、運転を受け身にし、チューニングを難しくするコンピューター制御を一定限度にとどめるということだと語った。
 トヨタによると、「86」の最高時速は230キロ、発進から時速100キロまでの加速に要する時間は6秒だという。

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