トヨタ社長「自動車のビジネスモデル崩壊」 政府の「脱ガソリン」に苦言

菅義偉首相が打ち出した2050年に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする目標に向け、産業界の「重鎮」が苦言を呈した。 【トヨタ2000GT 幻の名車19台が集結】  日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は17日、オンラインで取材に応じ、政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。日本は火力発電の割合が大きいため、自動車の電動化だけでは二酸化炭素(CO2)の排出削減につながらないとの認識を強調し、電気自動車(EV)への急激な移行に反対する意向を示した。  原発比率が高く、火力発電が日本と比べて少ないフランスを例に挙げ、「国のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」「このままでは日本で車をつくれなくなる」などと発言。EVが製造や発電段階でCO2を多く排出することに触れ、「(そのことを)理解した上で、政治家の方はガソリン車なしと言っているのか」と語気を強めた。ガソリン車の比率が高い軽自動車を「地方では完全なライフライン」とし、「ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルに近づくと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」と述べ、拙速な「脱ガソリン車」には賛成できない考えを示した。  一方、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は17日の定例記者会見で、50年「実質ゼロ」の目標の実現について、研究開発に「10年、20年はかかり、個別企業として続けるのは無理だ」と述べ、国の支援を求める考えを示した。  政府の目標達成には、自動車業界や鉄鋼業界の協力が不可欠。「財界総理」と言われる経団連会長を輩出し、政府に対する発言力も強いトヨタや日鉄のトップから懸念が示されたことで首相の「ゼロエミッション」は曲折も予想される。【松岡大地】

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