トヨタ:プリウスPHVを1月末発売-来年の反転・販売増に弾み

11月29日(ブルームバーグ):トヨタ自動車は「プリウス」のプラグインハイブリッド車(PHV)を来年1月末に国内投入する。リーマンショックや東日本大震災などで大きくつまずいたトヨタは来年、PHV投入をきっかけに新車を大量投入し、販売回復に弾みをつける。
トヨタは電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)も含め全方位で開発を進めているが、PHVについては「ハイブリッド車(HV)に次ぐ次世代環境車の柱」と位置付けている。世界の自動車メーカーではゼネラル・モーターズ(GM)などが既に投入しているが、トヨタはバッテリーの安全性などの確認のため開発に十分な時間をかけ、満を持して投入する。国内メーカーのPHVの市場投入は初めて。
外部電源から充電できるPHVは、EVとHVの長所を併せ持ち、従来のHVよりもモーター駆動の走行距離が長くなる特徴がある。
トヨタの内山田竹志副社長は29日のインタビューで、多数の新車投入予定の来年は「リーマンショックで200万台落ちた販売を回復に向けて」取り戻す年になると強調した。また、28日の都内の取材に対しては、年内にもタイ洪水の影響から回復し、生産正常化を期待していると述べた。
価格は320万円から
トヨタが29日に受注開始を発表したプリウスPHVは、価格が320万円から。フル充電でEVとして26.4キロメートルの走行が可能で、PHV燃費はリッター当たり61キロ(JC08モード)。年間の販売目標は3.5万-4万台。
自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは「投入タイミングは多少遅かったかもしれないが、日産自動車、三菱自動車がEV販売を加速する中、トヨタはPHVを出すことでEVに流れる顧客層を確実に引き寄せることができる」と指摘した。トヨタは小型HVの「AQUA」(アクア)も投入予定で、ハイブリッド顧客層の囲い込みも期待できると述べた。
トヨタの佐々木真一副社長は発表会見で、プリウスPHVは欧米でも来年初めに発売し、年間の世界販売で6万台を目指すことを明らかにした。
「よそに負けるはずがない」
来年から2015年にかけて自動車各社がPHVを投入予定で、競争が厳しくなるとみられているが、内山田副社長は29日のインタビューで「よそに負けるはずがない」と技術やコスト面の優位性を強調した。トヨタはHVを最初に市販化し、累計販売340万台の実績があることから、「市場からのフィードバックの蓄積も、原価低減の取り組みも積み上げてきている」と述べた。
ハイブリッド技術について、内山田副社長は初代プリウス開発当初、80種類もの中から「システムの効率だけで」4種類に絞り込み、さらに実現性を考えて選び抜いたと説明、他社の追随は想定にないという。また、システム選択時は度外視したコストも、設計構造改善などで3代目プリウスでは初代に対して3分の1程度にまで下がったと語った。
内山田副社長は、新たな技術を搭載したPHVでは1台当たりコストが「上がっている」ものの、収益バランスは「成り立っている」状態と述べた。今後のコスト低減は、主にバッテリー分野で進めるという。PHVは三洋電機製のリチウムイオンバッテリーを新たに搭載し、最高速度100キロメートルまでEV走行が可能となっている。EV並みバッテリー容量を確保するには「あと2回は技術的なブレイクスルー」が必要だという見通しを示した。
今世紀中は化石燃料が主流
将来の脱石油に向けてトヨタは、化石燃料を使わない環境対応車の開発も進めており、EVは12年に近距離用途として導入、FCVは15年ごろ導入予定としている。しかし、完全な脱石油には時間がかかるとみており、内山田副社長は「全体の割合はまだオイルという状態が、今世紀くらいは続く」との見方を示した。
その間、内山田副社長はHV技術が必要との認識で、HV普及の観点から他社への技術供与は「需要があれば積極的に展開していきたい」と述べた。
トヨタは8月、米フォード・モーターとライトトラックとスポーツ型多目的車(SUV)向けハイブリッドシステム開発で提携する計画を発表した。フォードは13年までに北米でEVやHVの生産台数を現在の3倍余りとなる10万台に増やす計画を立てている。

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