トリチウム、魚介に蓄積せず 福島大など分析 青森、岩手沖で採取

福島大と海洋生物環境研究所(東京)の研究グループは6日、東京電力福島第1原発にたまる処理水にも含まれる放射性物質トリチウムが、魚介類などの海洋生物には蓄積しないことが確認できたと発表した。

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が試運転した期間を含む2003~12年度に青森、岩手両県沖で採取した海洋生物の体内濃度と海水のデータを分析した。

 海洋生物の体内トリチウム濃度は、生育環境のトリチウム濃度を上回らないことなどが、これまでの研究で知られている。

 研究グループはカタクチイワシやマダラ、スルメイカなど20種類の海洋生物と海域の海水データを解析。安定してデータを得られた9種類の生物は、体内の水分中のトリチウム濃度が海水中の濃度の平均0・8~1・3倍で、ほとんど差がなく「蓄積しないことが示された」と結論付けた。

 トリチウムは原子力関連施設から排出され、使用済み核燃料再処理工場が特に多い。再処理工場が試運転した06~08年度は、一部の海洋生物の体内や海水の濃度が上昇したが、09年度以降は試運転前の値に戻ったことも判明した。原発事故の影響は見られなかった。

 一方、放射性セシウム137は、海洋生物の体内と海水の濃度比が平均33~74倍に上り、蓄積することが明らかだった。

 福島大環境放射能研究所の高田兵衛(ひょうえ)准教授(海洋化学)は「(福島第1原発)処理水の海洋放出による影響を評価する上で、重要な情報になる」と説明する。

 研究グループの論文は日本海洋学会の英文誌に掲載された。

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