日本では痴漢被害が後を絶たず、長年、社会問題となっている。最近では、元警視庁のSPの52歳の男が、痴漢行為を疑われるも駅員の制止を振り切って逃走し、それを見て男を取り押さえようとした20代の男性が階段から突き落とされる事件が起きた。男性は、一時、意識不明の重体となったが、現在は会話ができる状態まで回復したという。男はその後、周りにいた他の人たちに取り押さえられ、傷害の現行犯で逮捕された。男は過去に痴漢行為で現行犯逮捕されていたことが報じられている。
しかし、ヨーロッパの中ではシャイな国民性を持つと言われ、日本と似ていると言われることの多いドイツでは、ほとんど痴漢に遭うことがないようだ。ドイツの電車やバスは日本ほど混んでおらず、体が密着しづらいということがあるが、それを差し引いても、ドイツでは痴漢被害が少ない。それはどうしてだろうか。
ドイツで痴漢被害が少ない最も大きな理由の一つは、痴漢に立ち向かおうとする人が多いことだろう。ドイツ人女性が日本の痴漢の話を聞くと、多くの人が「私だったら痴漢された時点で声を上げる」「痴漢されたら即、引っぱたく」と話す。日本の場合、どこかに“女性は女性らしく”という考えがある人も多く、大声を出したり、明らかに痴漢をされても人に手を上げることに抵抗があるのかもしれない。だが、ドイツ人女性にはそういった考えがないようだ。女性らしくというより、小さなことでも男女が平等でありたいと思う人が多い。
「ドイツでは、男女が比較的対等で、デートで男性に支払いをされることを嫌う女性が多くいるほどです。ドイツ人女性が、『痴漢に真正面から注意できる』と言えるのは、普段から男性に対してはっきりと意見できる環境もあると思います」(ドイツ在住日本人)
さらに、痴漢に対する意識も日本とは異なっているようだ。日本では痴漢が小さないたずらかのように、日常で起きている。「今日、痴漢をされた」という会話が交わされることも珍しくないだろう。だが、ドイツでは強姦と同じような重い罪であると捉える人が多い。そういった意識も痴漢を生まない抑制力になっているようだ。
そして、ドイツではいわゆる変態やムッツリスケベがあまりいないことも、痴漢が少ない理由であろう。ドイツ人は思ったことや、自分がどういった人間なのかを人に伝えるのが得意だ。妄想が膨らみ、痴漢のような変態行為をしてしまうことはあると思うが、ドイツ人は考えを自分の中で留めることが少ないため、妄想に歯止めがかかるのだ。
出会い系サイトを見ても、日本では、体目的で人と会うことを失礼、恥ずかしいと考える傾向があるが、ドイツはそういった点に関して非常にオープン。体目的であれば男女問わず、性行為をしたいだけだとはっきりと言うし、体目的であることが前提で会う場合も珍しくはない。恋人がいても「恋人がいるから体目的で会える人を探している」という人がいるほどだ。しかし性欲をため込まないことも、妄想が行き過ぎずに済む要因だろう。
「ドイツでは、挨拶の握手やハグなどで、普段からボディータッチをする機会が多いんです。身体に触れたいという好奇心が日本より低いことも、変態を生みにくく、痴漢が発生しないことにつながっているのかもしれません」(前出・同)
ドイツ人のような考えを持つ人が少しでも増えれば、日本の痴漢被害も減るかもしれない。