日本の自動車メーカーはハイブリッド車(HV)でエコカー市場をけん引してきたが、世界の新車市場はエンジン車が依然として9割以上を占めている。2013年に世界で生産された約8500万台のうち、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車を含めたHVは190万台、電気自動車(EV)は10万台強だった。一方、エンジンを小型化して、低下した出力を過給器で補うガソリンターボ車は900万台に達している。18年にはターボ車は2400万台にまで増え、エコカーの一角を占める見通しだ。従来からエンジンの小型化に力を入れてきたドイツ勢に加え、日本勢も小型・高出力エンジンの分野で先行するドイツ勢に対抗すべく、新たに過給器付きモデルを投入する計画だ。
HVの開発に注力してきた日本の自動車メーカーの姿勢に対する懸念は以前からあった。みずほコーポレート銀行 <8411> は「20年に中国市場の3分の1がエコカーになるが、最も普及する技術はHVでもEVでもない。ガソリンエンジンの小型化で燃費を改善する『ダウンサイジング』と呼ばれる簡素な技術が主役になる」と予想していた。背景にあるのは環境規制の強化だ。中国で15年に導入される燃費規制では従来より2割以上の燃費向上が求められる。当初、中国では日本のハイブリッド車技術の導入も検討された。しかし、仕組みが複雑すぎるうえ、技術流出を恐れる日本勢も慎重になり、結局は立ち消えとなった。
そこに売り込みをかけたのがドイツ・フォルクスワーゲンだ。従来のエンジンを小型化し、ターボチャージャーを組み合わせてハイブリッド車並みの走りと燃費を実現した。コストも格段に安くてすむ。フォルクスワーゲンのダウンサイジング技術は9年連続で「インターナショナル エンジン オブ ザ イヤー アワード」を受賞。世界中から高い評価を得ている。
15年は日米欧でも燃費規制が強化され、技術が世界で一変する年だ。市場の中心が新興国に変わりつつある。技術で先行しても市場は奪われる。そんな苦い経験を日本企業は携帯電話で味わった。攻め方を誤れば「最後の砦」となった自動車産業でもガラパゴス化の懸念はある。日本勢はHV技術だけではマーケットの主導権を握れないと判断したのかも知れない。(編集担当:久保田雄城)