ドカ降り記録ずくめ 平均積雪、平年の1.7倍 東北

 東北地方は今冬、「平成18年豪雪」で各地に被害をもたらした2005~6年の冬以来の大雪に見舞われている。仙台管区気象台によると、東北の74観測地点の積雪量は今のところ、平年値と比較した割合の平均が約1.7倍。福島県猪苗代町が5倍近くに達したほか、日本海側や山沿いを中心に記録的なドカ雪となっている地域もある。
 気象台によると、26日午後9時現在の積雪量は山形県大蔵村肘折309センチ(平年比144%)青森市酸ケ湯302センチ(122%)福島県只見町218センチ(156%)など。
 平年との差が大きいのは猪苗代町147センチ(490%)を最高に、大崎市川渡60センチ(300%)由利本荘市53センチ(279%)尾花沢市184センチ(249%)など、各地で平年を上回っている。
 湯沢市は22日に163センチを記録し、1985年の観測開始以降の最深積雪量を更新。福島県金山町も20日に177センチを観測するなど、5地点で史上1位の記録を塗り替えている。
 気象台は「東北は昨年12月末以降、冬型の気圧配置と強い寒気の影響で、各地で雪が降り続いた。気温も低く、雪が解ける間がないうちに次の雪が降るという繰り返しで、大雪になっている地点もある」と分析する。
 3カ月予報によると、気温が平年より低い状態は2月上旬で一段落するが、雪はその後も平年並みに降る見込みで「3月下旬までは警戒が必要」と呼び掛けている。
◎雪過ぎ、東北恐々/事故多発、死傷者392人/日本海側集中/転落など高齢者大半
 日本海側を中心に記録的な大雪が続く東北地方で、雪による事故が多発している。宮城を除く5県で死者は25人、負傷者は367人(25日現在)に上り、昨冬を大幅に上回る。犠牲者の多くは高齢者で、各県などは事故防止を呼び掛けている。
 各県・県警によると、県別の死傷者数は表の通り。秋田が160人と最も多く、うち65%は積雪量が平年より多い県南地区が占める。山形も131人に達し、日本海側の被害が目立つ。全体の死傷者数は現時点で既に昨冬の207人を超え、6県で816人が死傷した「平成18年豪雪」(2005年12月~06年2月)に迫るペースだ。
 特に自宅敷地内での事故が多い。弘前市の男性(70)は22日、自宅1階の屋根で雪下ろし中、足を滑らせて転落し、鼻の骨を折るなど重傷を負った。新庄市の女性(84)は25日、自宅の屋根から落ちた雪の下敷きになっているのが見つかり、死亡した。
 自宅敷地外での事故も少なくない。岩手県田野畑村の男性(78)は12月23日に排雪作業中、川に転落して死亡。福島県猪苗代町のゴーカート場では今月19日、経営者男性(59)が除雪機と雪の壁に挟まれ亡くなった。
 被害の防止に向け、地域ぐるみの動きも各地で出てきた。
 青森市社会福祉協議会はボランティアを募り、市内の1人暮らしの高齢者や障害者宅などの雪下ろしを実施。市民から問い合わせが相次いでいるという。尾花沢市社協は「雪かき塾」を開き、地元の中学生が建設業者から雪かきの仕方を教わった後、高齢者宅の玄関先を除雪した。
 行政も対策を急ぎ、秋田市は要援護者のための雪害対策チームを5年ぶりに設置。民生委員から情報を集め、雪による建物の倒壊の危険性などを把握、高齢者や障害者の不安解消を図っている。
◎雪下ろしのポイント/脚立に乗ったまま危険、気温にも注意
 横手市は高齢者宅などの雪下ろし支援事業を市内の建設業者76社に依頼している。事業に参加する伊藤建設工業で建築部本部長を務める林亨さん(63)に、事故防止のポイントをアドバイスしてもらった。
 雪下ろしの作業はまず、複数の人数でやるのが基本。声を掛け合い、安全を意識しながら進める。ヘルメットの着用も忘れてはいけない。
 屋根に上るはしごは、雪が落ちてくる危険のある軒先ではなく、側面のつま側にがっちりと固定する。屋根に取り付けている「雪止め」の奥側に立ち、軒先の雪庇(せっぴ)を落とすだけでも屋根の荷重は軽くなる。
 脚立に乗ったまま雪庇を落とす人もいるが、脚立は不安定な上、落ちてきた雪に巻き込まれて転倒する危険がある。
 雪は、気温が氷点下2度ぐらいから解けるため、0度はかなり危険な状態。解けた雪とともに転落する事故が多く発生している。雪が解けてきたと感じたら、作業はやめるべきだ。
 雪下ろしの危険性を軽く考えてはいけない。

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