ドコモ、LTEで“参戦”なら…「iPhone5」で競争激化

 携帯電話市場で、今年の最大の関心は米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)5」の登場と、NTTドコモによる同機種販売の行方だ。米国では今秋にも高速データ通信規格「LTE」を搭載したアイフォーン5が発売されるとの観測も出ており、LTE展開で先行するドコモをパートナーに選ぶのは自然。実現すれば、市場シェアに地殻変動を引き起こす可能性もありそうだ。
 「(アイフォーンが)LTEに向かうのは事実と思う」
 昨年10月、ソフトバンクモバイルに続きアイフォーン販売に参入したKDDIの田中孝司社長は、そう認めたうえで、仮にドコモが参入した影響について、「今もドコモが大きなシェアを持っているし、競争環境は変わらない。脅威ではない」と冷静を装う。
 ただ、調査会社のMM総研は「ドコモがアイフォーンを販売すれば、国内のスマホ市場へのインパクトは大きい。出荷台数は大幅にプラスになる」と予測。2012年度の携帯電話出荷台数3910万台のうち2660万台、68%としているスマホ市場予測の上方修正を見込んでいる。当然、現在も全体の約5割を占めているドコモの市場シェアがその分増えるわけだ。
 ドコモは現時点で参入の有無については沈黙している。昨年12月に一斉に参入が報じられた際には、直後に「現時点において当社がアップル社と基本合意した事実はない。また、現時点において、具体的な交渉をしている事実もない」と否定した。
 しかし、アイフォーン発売の可能性について、ドコモの山田●持社長は「諦めたわけではない」と繰り返してきた。もともとアップルがアイフォーンを日本に投入した08年。通信事業者はドコモが最有力とみられていた。契約条件や特許問題などが障害になったといわれるが、現在は、アップルがアンドロイド対抗策として複数の通信事業者にアイフォーンを供給する方針に転換している。
 山田社長は「(米グーグルの基本ソフトである)アンドロイドを主軸にやっていく」と述べる一方で、キラー端末としてアイフォーン以上のスマホがないことを認める。アップルとしても、日本で最もアンドロイド端末を販売するドコモにアイフォーンを売らせるのが最大のアンドロイド対抗策となることは百も承知。参入に向けた環境はほぼ整ったといえる。
ソフトバンク、KDDIどう対抗
 残る障害は、端末とサービスをセットで提供するアップルと、通信サービスを中核に端末開発、ネットサービスの総合展開を目指すドコモのビジネスモデルが衝突する点だ。ただ、それでもドコモの山田社長は、アイフォーンについて「端末の一つとして扱いたい」と販売に意欲を示す。
 もちろん、アイフォーン5以外にも台風の目はある。が、やはり同じアップル。今夏までに投入すると噂されているタブレット型端末「iPad(アイパッド)3」だ。高精細ディスプレーとLTEが搭載されるとみられている。各社が製品化を競うタブレット型端末だが、この分野でも「売れているのは8割方アイパッド」(証券アナリスト)とアイパッドの競争力は抜きん出ている。LTE搭載となれば、アイフォーン同様にドコモの参入確率は高い。
 アップル・ドコモの強力タッグの実現というXデーを前に、ソフトバンク、KDDIはどう対抗するか。価格競争激化を含め、市場は大荒れの展開も予想される。(芳賀由明)

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