ドバイで感じた日本の黄昏

【from Editor】
 新聞記者の役割の一つに、世の中の最先端の動きを知らせる仕事がある。だが記者にも得意、不得意な分野がある。自分の不得意分野は芸能界や国際社会の最新動向といった領域だ。
 この時期、毎年のように発表される紅白歌合戦出場歌手の半分程度が分からない。「AKB48」を「エーケービー・フォーティーエイト」と読むのだと知ったのは世間からずいぶんと遅れていた。
 同じく疎い分野である国際社会の最新動向を、先日、中東・ドバイへ行く機会があり、肌で感じる場面があった。ドバイに原油は産出しない。だから貿易に活路を見いだした。この10年ほどで近隣のオイルマネーを集め、世界有数の近代都市になった。
 だが日本では、2年前のリーマン・ショック、昨年のドバイ・ショックで投資資金が逃げ、勢いはない…と伝えられている。「黄昏(たそがれ)」「宴(うたげ)のあと」といった見出しで現地のことを紹介した記事も多い。
 確かに日系企業の進出数は頭打ち。地下鉄工事代金が払えず、日系企業が大赤字を計上するといった話もある。工事がストップしたままの高層ビルもチラホラ。
 しかし、肌で感じたドバイは、黄昏どころか元気だった。東京スカイツリー(634メートル)をしのぐ、828メートルの高層ビル「ブルジュ・ハリファ」が完成したのは今春。ホテル開業も相次ぐ。
 世界最大となることを目指した新空港も7月に部分開業した。新空港に隣接して世界6位の貨物港があり、見渡す限りコンテナの山が連なっている。企業に税などを優遇する広大な経済特区も隣接している。欧州、アフリカ、アジアを結ぶ物流拠点としての地位を確固たるものにする考えという。
 その意欲ぶりは、日本でのイメージとは大きなギャップがあった。経済特区のスタッフは「最近の日本のプレゼンスの弱さが際立つ」という。ホテルのマネジャーは「ビジネスチャンスはあるのに日本企業は撤退する。いまのドバイは、最近進出が著しい中国、韓国がつくっている。スイスなど欧州の資本進出も盛ん」とも。
 日本でドバイの元気な部分が伝わらないのは、日本があまりに内向きで、影の部分しか見えてこないからかもしれない。
 産経新聞で連載「やばいぞ日本」が掲載されたのは3年前。その深刻さが、国際動向に疎い私にまでひしひしと伝わるまでになっている。黄昏なのはドバイではなく、日本だった。(副編集長 赤堀正卓)

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