仙台市は津波警報などの発表時、高速通信規格「LTE」に制御された全自動ドローン2機が、市沿岸部で避難を呼びかけるシステムの試験運用を19日に始めた。南蒲生浄化センター(宮城野区)を発着の拠点とし、10月17日から本格運用する。市によると、全自動運行の津波避難広報、専用LTEによる機体制御とも世界初の取り組みという。
警報発表後、沿岸ルート飛行
市が使用するのは、産業用ドローン製造販売「ACSL」(東京)製の2機。いずれも直径約1・2メートル、高さ約0・7メートル、重さ約9・3キロで、スピーカーとカメラを搭載している。
全国瞬時警報システム(Jアラート)と連動し、大津波警報や津波警報、注意報が発表されると、気象条件から飛行の可否を自動で判断。浄化センター屋上に設置した格納ポートから飛び立ち、宮城野区の仙台港向洋海浜公園方面の北ルート(約7キロ)と、若林区の深沼海水浴場方面の南ルート(約8キロ)を飛行する。
観光客や釣り客、サーファーらを念頭にサイレンを鳴らし「高い津波の恐れ。避難を指示する」などと自動音声を流し、海岸線付近の上空から広報する。搭載のカメラで撮影した映像は、青葉区役所内の市災害情報センターに送信する。
市は東日本大震災で避難広報中の職員2人が犠牲となった教訓を生かし、2016年度からドローンによる避難広報の実証実験に取り組んだ。当初は22年4月ごろの本格運用を目指したが、世界的な半導体不足の影響などで機体の到着が遅れた。
市危機管理部の工藤仁司部長は「沿岸部には住民以外にも多くの人が訪れる。警報発表からの迅速な避難誘導につながるよう着実に準備を進める」と話した。
LTE基地局やマイクロ波通信設備を含む整備事業費は約1億7000万円。地方創生臨時交付金約8000万円を活用した。
ドローンは11月4日に実施する市の津波避難訓練でも飛行する。