袋麺がこの世に誕生して55年を迎えた現在、メーカー間で熾烈な競争が巻き起こっているのをご存知だろうか。インスタントラーメン評論家の大山即席斎氏が事情を解説する。
「袋麺のライバルはカップ麺。カップ麺は’71年に発売され、’89年に生産量で袋麺を超えました。昭和は袋麺の時代、平成はカップ麺の時代といえます」
その傾向に変化をもたらしたのが、一昨年の東日本大震災だった。保存食として再び注目を集め、’08年から’10年まで3年連続で縮小傾向であった袋麺市場は’11年度、前年比104.9パーセントのプラス成長に転じた。
「カップ麺は孤食のイメージがありますが、袋麺は大切な人と一緒に調理して食べられる。震災以降いわれる『人との絆』を再確認することができる食品でしょうね」(大山氏)
その一方で多くの関係者が口を揃えるのが、’11年11月に発売された東洋水産『マルちゃん正麺』の存在だ。発売から1年間で2億食を出荷したという『マルちゃん正麺』。5食入り希望小売価格500円(税抜き)をもとにすれば約200億円を売り上げたことになる。「50億円も売れれば成功」(メーカー関係者)という業界で、とんでもない大ヒットとなった。
発売前には全国7カ所で約700名のバイヤーなどを相手に発表会を開催。製造ラインが未完成だったため、20人あまりの社員が総出で一部の工程を手作業した。約2週間の間に試食用を3万食用意したという。
もちろん、この成功に他社が手をこまねいているわけはない。日清食品は昨年8月に関東甲信越静岡地区限定で『日清ラ王』の袋麺を発売。現在、想定の2倍以上の売り上げを記録するなど、こちらも業界の注目を集めている。
開発に携わったマーケティング部のブランドマネージャー・木所敬雄氏は、発売前に東京・汐留で行なった前代未聞のイベント『値段のないラーメン屋』をオープンしたときのことをこう振り返る。
「ラ王であることを明かさず、2,047人のお客様にラーメンを提供し、おひとりずつ納得できる値段を自由につけていただきました。その結果、平均納得価格545円という評価を得ることができました。残念ながらまだ全国販売はできていませんが、食べてくださったお客様から毎日のように嬉しいメールやお電話をいただいており、十分な手ごたえを感じています」
長い停滞期を経て活気を取り戻した袋麺。生産体制が盤石となる’13年こそ、本格的な”逆襲”の始まりだ。
(週刊FLASH 1月22日号)