ニンニクに地域再興託す 仙台・荒浜

 東日本大震災の津波で被災した仙台市若林区荒浜の住民らが、地域の復興と農業の再生を目指してニンニクの栽培を本格的に始めた。地域内で加工も手掛け、6次産業化を図る。ゆくゆくは自然環境の回復にも取り組み、観光客を呼び戻したい考えだ。
 荒浜地区は、大部分が災害危険区域に指定され、住宅の新築ができなくなった。「このままでは集落が消滅する」と危機感を募らせた住民らは、ことし5月に「荒浜まち起こし実行委員会」を設立。交流人口の増加に地域の活路を求めた。
 取り組みの第1弾として9月中旬、約30アールの畑にニンニクを植え付けた。来年初夏に収穫し、発酵食品の「黒ニンニク」やタマネギと混ぜ合わせた「ニンニクジャム」に加工する予定だ。
 黒ニンニクはドライフルーツのような食感で甘みや酸味が増す。発酵させることで独特のにおいも薄れるという。「自家用に作ったところ、友人たちにも好評で自信を持った」と実行委メンバーの農業貴田国松さん(65)。
 水はけの良い砂地の荒浜地区はニンニク栽培の好適地とされる。震災以前にも栽培する農家はいたが、ほとんどが自家用だった。無農薬栽培と加工で付加価値を高め、新たな特産品に育てたい考えだ。
 さらに実行委は今後、水田の塩害を逆手に取ったシジミ養殖、ホタルのすむ環境作りにも挑戦する。実行委会長の農業貴田喜一さん(69)は「豊かな自然を取り戻し、大勢の人が遊びに来る場所にしたい」と語り、海水浴などでにぎわった荒浜の再興を誓う。
 荒浜まち起こし実行委では活動の支援金を募っている。支援者には金額に応じて黒ニンニクを送る。連絡先は貴田国松さん090(2523)0358。

タイトルとURLをコピーしました