ネタ切れなのかただの偶然か!? かぶりすぎるバラエティーの実情-

長引く不況に伸びない視聴率。国民のテレビ離れが叫ばれる中、番組制作費は10年前の半分とも1/3とも言われている。テレビならではの大掛かりなセットを組んだ番組は特定され、豪華なキャスティングは番宣以外にありえない。自主規制という名のもとに体を張れる企画も限られ、金もなきゃ無茶もできないというのが今のテレビバラエティー。そんなテレビバラエティーに残された道は頭を使うこと。つまり企画というアイデアだ。低予算でもその企画さえ見事であれば面白い番組ができる。『ホコ×タテ』(フジテレビ系)などの例を出すまでもなく、それは当然のことといえるだろう。予算が限られ、なにかと風当たりが厳しいテレビバラエティー界。そんな状況を打破するためには、とことん視聴者を楽しませる秀逸な企画が必要となっている。
 しかし、今秋始まった新番組の中には、まったくと言っていいほど同じネタを扱う番組が多い。たとえば、『ストライクTV』(テレビ朝日系)と『1番ソングSHOW』(日本テレビ系)など、アプローチの仕方が若干違うものの、特定した時代の懐メロを特集するという点で酷似するし、また、『なかよしテレビ』(フジテレビ系)と『世界のみんなに聞いてみた』(TBS系)も、フジテレビが日中韓の三国に限っているものの、外国人をスタジオに呼んでトークを展開し、日本人と外国人の違いを楽しむという点では同じ印象。そして、雑学ネタを披露する『まさかのホントバラエティー イカさまタコさま』(TBS系)と『中居正広の怪しい噂の集まる図書館』(テレビ朝日系)は番組構成が違うだけで中身は同じといえる。いずれの番組も今秋始まった新プログラム。なぜこうした事態が起こってしまうのだろうか。
「これだけ番組の数が多いのに、テレビ業界というのも広いようで狭いですからね。自分の担当している番組に似ている番組があるというのはよく耳にしますよ。昔の人は、『それなら今度はこうしてやる』と言って、違う企画にトライしたみたいですけど、最近は、そういった話を聞くと、『ああ自分は間違ってなかったんだ』と安心する傾向にあるみたいですね。よくそんな話を先輩作家から聞きます。放送作家というのも変わってきているということなんですかね。ただ、限られた予算の中でもっとも安く使われるのは若手の放送作家とかリサーチ専門の方ですから。そんな人々が必死になってかき集めたネタを披露する番組というのは多くなるんだと思います」(放送作家)
 確かに、『まさかのホントバラエティー イカさまタコさま』と『中居正広の怪しい噂の集まる図書館』や『ストライクTV』と『1番ソングSHOW』など、特定のジャンルに特化したリサーチ結果を披露する番組には、そのネタ自体がかぶっている場合が多い。限られた予算という枠の中で、流行や視聴者の興味があるだろうことを踏まえれば、おのずと同じような内容になってしまうということなのかもしれない。
「外国人タレントというのも、通常のタレントより安価にブッキングできますからね。中にはほとんど無給という人もいますし。それでいて、外国人というキャラクターは、2流のタレントなんかより面白いですから。ただ、彼らのような独特なキャラクターは、強烈な分だけ賞味期限が短いともいえます。視聴者が飽きない程度のスパンで番組を構成する必要があるんじゃないでしょうか。今回、フジテレビとTBSで似た番組が放送されているというのは、そのタイミングが重なってしまったんでしょう」(前出)
 テレビがつまらなくなったという話題が挙がれば、まっさきに矢面に立たされるバラエティー。その理由には、多くの番組がどこか似たような印象を持ってしまっていることにあるのかもしれない。その一例が企画の酷似ということなのだろう。しかし、冒頭に記した『ホコ×タテ』のように、業界内からの評判もよく、視聴率も好調なバラエティーも出てきている。中でも、『やりすぎコージー』(テレビ東京系)を手がけたスタッフが今秋からスタートした『ざっくりハイボール』(テレビ東京系)は、収録を終えた出演陣が感想を語ってから番組が始まるという大胆なアプローチで新しいバラエティーの形を提案している。いずれにしろ、似たような企画が存在する番組は淘汰されるだろう。いち視聴者という立場からすれば、テレビバラエティーにはもっと冒険してもらいたいものだ。
(文=峯尾)著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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