今、タピオカがブームです。若い女性がタピオカミルクティーの販売店に長蛇の列をつくり、黒い粒が底に沈んだティーカップを手に街歩きするといった光景は、もうおなじみになりました。
最近、このブームが“株価暴落の前兆”とネットなどで話題になっていますが、短絡的で危険だと思います。
タピオカは過去2回、流行したことがあって、1回目がバブル崩壊の1992年、2回目がリーマン・ショックの2008年であることが根拠のようですが、そう単純なものでしょうか。
このブームは、若い女性が牽引(けんいん)しています。ブームの始まりは、おそらく「モチモチしている」「スタバのドリンクよりカロリーが低そう」といったことでしょう。そこに、少し目立つ女性が「これ流行しているのよ。あなた知らないの?」と上から目線で言ったことが、「自分も飲まないと取り残される」と女社会特有の価値観を生み、どんどん連鎖、拡散しているといったところだと思います。
友人の前で「私も絶対飲む」などとひとたび言おうものなら、後で必ず「あれ、飲んだ?」とチェックが入るので油断なりません。行列に並び、インスタ映えを狙って写真をアップするのも、「ほら、飲んだからね」といった友達へのマウンティング(自分が優位であるアピール)が隠れていると私は見ています。
それなのに、女社会を知らない男たちがタピオカブームを株価暴落の前兆と思い込むと大変なことになります。景気の「気」は気分の「気」ですから、本当に株価暴落を引き起こす要因になりかねません。
ちまたの不安を吹き飛ばすため、タピオカブームに対抗する話題を探してみました。するとたちまち香川県の友人が「タピオカより、うどんでしょ」とミルクティーの底にうどんを沈めた「うどんミルクティー」の写真をSNSにアップしているのを発見! さすが「うどん県」と感心していると「白玉ミルクティー」なるものも見つかりました。特に主婦に人気のようで、レシピサイト「クックパッド」には家庭でできるレシピがたくさん紹介されています。
他にも「団子ミルクティー」や「餡子ミルクティー」など、タピオカに負けてたまるか、といわんばかりのミルクティーが世にあふれています。
みなさん薄々、感づかれたと思いますが、これらには重要な共通点があります。そうです。すべてミルクティーなのです。もしかしたら本当のブームはタピオカではなくミルクティーなのかもしれません。そうであれば経済の見通しは明るいはず。ミルクティーにまつわるエピソードは欧州上流階級のリッチムードが漂うものばかりです。
なかにはイギリスでミルクティーが人気を集めたのは女性が強くなり、カフェに出入りできるようになったからという説もあります。だとすれば若い女性がこぞってミルクティーを飲みだしたのは、株価暴落どころか女性がさらに強くなる前兆かもしれません。男性のみなさま、お気をつけて。
■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを3000件以上成功させた“ブーム仕掛け人”。